大混戦の騎馬戦


『さぁ起きろイレイザー!15分のチーム決め兼作戦タイムを経てフィールドに12組の騎馬が並び立った!!』


寝てたのか、相澤先生。終了の合図を聞いて騎馬を組んでいく。前騎馬が一番視界が開けているので、私の個性的にはそこがいいが、勝己の爆破に耐えられる気はしないので大人しく切島くんに譲った。

瀬呂くんと左右はお互いどっちでもよかったので、じゃんけんで決めた。


「名前、その蓋開けていつでも個性使えるようにしとけ。」


「もう開けてあるよ。」


周辺には既に個性で水蒸気を多めに配置してある。少しじめっとしてるが、そのほうが勝己も汗がかきやすい。


「っしゃ!頑張ろうぜ!」


切島くんの鼓舞で、私たちはやる気に満ち溢れていく。大丈夫、私たちは絶対やれる!


『よォーし、組み終わったな!?準備はいいかなんて聞かねぇぞ!!行くぜ!!残虐バトルロイヤルカウントダウン!』


私たちのチームは勝己の200P、切島くんの170P、瀬呂くんの175P、そして私の120Pで合わせて665P。勝己が上で鉢巻を締めなおしている。


『3!』


「絶対取って1位で通過しようね。」


『2!』


「当たり前だろ。完膚なきまでの1位で優勝してやる。」


『1……!』


「じゃあいっちょやってやるか……!」


『START!!』


掛け声とともに、各騎馬が一斉に動き出す。出久に向かっていったのはB組と、葉隠さんのチームだ。


「とりあえず取れるとこ取って行って緑谷が油断した隙に行くぞ!」


方向は切島くんが決めてくれるから、私と瀬呂くんは転ばないようについていく。今はまだ狙いを定めているところなのだろう。

一瞬で大混戦となった騎馬戦はあちこちから声が聞こえてくる。勝己はやる気に満ち溢れていて、出久には及ばないまでも相当なポイントを持っている。

こっちを狙ってくる人がいないとは限らないが、勝己はそんな油断していないようでよかった。


『まだ2分も経ってねぇが早くも混戦混戦!!各所でハチマキを奪い合い!1000万を狙わず2位〜4位狙いってのも悪くねえ!』


あちらこちらで個性を使っているような音もする。案の定視界が悪くて状況がうまく掴めない。


「クソ髪止まれ!」


勝己が叫んだかと思えば緊急停止。そして手にかかっていた重みが一瞬できれいさっぱりなくなった。


「調子乗ってんじゃねえぞクソが!」


爆破を使って飛び上がった勝己は、前方で飛んでいる出久に向かって一直線だった。右手を構えて攻撃の算段を整えている。が、あれ着地のこと多分考えてない。


「瀬呂くん!勝己捕まえられる!?」


「任せろ!」


勝己の攻撃は常闇くんの個性、黒影に防がれた。チーム組むときにも思ったけど、ほんっとにクラスメイトの個性を覚えてないらしい。

防がれたのが予想外だったのか、空中でバランスを崩した勝己に瀬呂くんのテープが張り付いて騎馬へと戻ってくる。


「急に飛び出さないで!常闇くんがいる限り、虚をつくかしないと多分黒影に防がれるから!」


「うるっせぇ!もっかい行くぞ!」


『やはり狙われまくる1位と、猛追をしかけるA組の面々共に実力者揃い!現在の保持Pはどうなってるのか……7分経過した現在のランクを見てみよう!』


恐らく今会場中の視線はモニターに注がれている。私たちがそちらを見ることは出来ないが、どうせ読み上げてくれるだろう。そうすれば今どこにポイントが固まってるか……。


「単純なんだよ、A組。」


『A組緑谷以外パッとしてねえ……ってか爆豪あれ……!?』


出久しか見えてなかった私たちは、背後から現れたB組に気付かなかった。あっさりと奪われた勝己のポイントは、私たちを0Pに落とし込んだ。

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