2人で



いつの間にか寝てしまっていたらしい私達は、源さんに起こされ、二人だけで遅めの夜餉をとることになった。

「何で惣次郎も寝るかな〜」
「いや最初に寝たのは真尋だしね?」

そんな何気ない会話に近藤さんや源さんは目を見開いた。
それでもすぐに近藤さんは何も言わず私達の頭を撫で、源さんはいつもの優しい笑顔を顔一杯に作った。
その温かさに心が満たされるのを感じて、私は先程交わした約束を一層堅く誓う。

強くなる。
近藤さんの力になれるよう。
「此処」を守るために。

そう私にある意味、生きる理由を与えてくれた彼…惣次郎に笑顔を向けると、彼もまた微笑み返してくれた。

「そういえば真尋、怪我の方はどうなんだい」
「問題ありませんよ」

何度か曲げ伸ばしをしてみても違和感なく、完治と言っていいくらいだ。
それじゃあ、と近藤さんは私と惣次郎を見比べて言う。

「明日は前に言っていた手合わせをしようか」



〜・〜・〜


その日の道場はいつもより騒ついていた。
と言ってもそれは惣次郎や源さん、近藤さん以外の門人……つまり、兄弟子にあたる男たちだけだが。
まぁそれもそのはず。

「今日はこの真尋と手合わせをしてもらう。この子が誰かに負けた時点で終了だが」

稽古の開口一番近藤さんが告げたからだ。
入門したばかりの…それもまだ年端も行かない子供と手合わせなど、考えもしなかったのだろう。

「順番は前に合わせたときの勝ち数が少ない者から」

では準備するように、と近藤さんが言うと、各自胴着を着け始める。
私が支度をしていると、惣次郎が小声で話し掛けてきた。

「僕とやるまで絶対負けないでね」
「………」

勝ち数が少ない者から――つまり、順番は実力順になると言う。
そうなると前に涼しい顔で次々と一本を取っていた彼は……全員に勝たないと相対しない。
そもそも私は父上に習っていただけで、こういう試合経験が無い。
なので現時点での自分の実力を全く知らなかった。
そう思うと、前に見た時は何となく勝てるかなー、何て思ってた兄弟子達が強く見えてきて焦りを覚える。
ちらりと周りを見ると、私と同い年の惣次郎がここで一番なせいか油断しきってはないものの、負ける気もしていない……様な顔ばかり目に入って、ちょっと腹が立つ。

「まぁ真尋なら大丈夫」

そんな私を見てか、惣次郎は悪戯っぽく笑いながら言ってくれた。
正直惣次郎の前でまともに剣術を振るった事は無いから、何故そう言い切れるのか分からなかったが、それが嬉しかったのは確かで。
私はにやりと笑って答えた。

「目に物見せてあげるよ」

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