6−3



「よし!これでいいわね」
「ありがとうございます」
「いいのよ!他には何かない?あ、月のものとかは大丈夫なの?」
「いや、それはまだ…」
「きたらすぐ言いなさいよ!良い方法考えといてあげるから」
「あ、ありがとうございます…」

ミツさんは本当に全面的に協力してくれるらしく、私が考えていなかったことまで考えてくれた。

「にしても女の子だとは思わなかったなー。美少年だとは思ってたけど」
「い、いや…そんな…」
「何ていうか…顔が中性的よね。その顔だったらきっと大きくなっても大丈夫よ!」

良いのか悪いのかよく分からない太鼓判を貰い、私は完全にミツさんの世界に呑まれていた。

「一人称は俺だったわね?」
「はい。一応考え事とかは『私』何ですけどね…」

性格的に言ったら、俺の方がしっくりくるんだけど…。

「何ていうか…戒め?ですかね。一応は女だという事を意識しとかないと、注意が疎かになりますし」
「まあ…所作のどれを取っても男の子だもんねぇ」
「……それ喜んでいいんですよね?」
「今はね。でも、それだとふとした時に間違えそうよね」
「それは思います。絶対俺と私混じる時があるだろうし」

やっぱり統一した方が良いのかなぁ…。
私がうーんと悩んでいると、ミツさんは柔らかい顔で私の顔を覗きこんできた。

「困ったことがあったらすぐ言うのよ?何でも協力するから」
「……どうしてそんなにしてくれるんですか?」

私はミツさんの好意に感謝しつつ、素朴な疑問をぶつけてみた。
するとミツさんは一層笑みを濃くし、私の頭を撫でる。

「だってもう一人の弟…妹?いや弟?みたいなものだもの」
「………」
「あなたが来てから、少し色々あったけど…毎日本当にいい顔をするようになったの、惣次郎が」
「惣次郎が?」
「えぇ、あの子は本当にいい顔をするようになった。今まではかっちゃんの前でしかあんな顔をしなかったのによ?」

真尋のおかげよ、そう言われて私は何だか照れてしまった。

「俺も今は毎日が楽しくてしょうがないんです。そう思う様になったのは…惣次郎のおかげです」
「そう…弟のこと、これからもよろしくね?」
「こちらこそ、宜しくお願いします!」

ミツさんの言葉に、私は満面の笑みで返した。



その後ミツさんは自宅へと戻り、私は惣次郎と共に仕事をこなす。
思えば沖田姉弟には世話になりまくりで少し気が引けるが、素直に甘えておこうと思う。
知られたのがミツさんで良かった。

「一人で笑ってたら気持ち悪いよ」
「……じゃあ惣次郎も笑え」
「無茶言わないでよ。何も無いのに笑えるわけないじゃない」
「いやいや今思いっきり笑ってるからね?」

そう言うと惣次郎は声を上げて笑いだす。

「そう返されるとは思わなかった。で、何笑ってたの?」
「いや…ミツさんて姉上って感じだよな〜って」
「姉上でしょ」
「そりゃ惣次郎にはね?そうじゃなくて、俺にとってもってこと」
「え、違うの?」
「は?」
「僕と双子〜とか言われてるんだから、真尋にとっても姉になるじゃない」

思わず思考が止まる。
言葉の意味が分かって、じわじわと嬉しくなってくる。

「…うん」

どうも惣次郎は私が喜ぶ言葉を知ってるみたいだ。



「何、照れてるさ?」
「照れてない!!!」

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