7−2



満開の桜の木の下。
お弁当を広げ、酒を飲み、とにかく騒ぐ。
それが私達のお花見である。
私はちびちびとお酒を呑みつつ、お弁当に手を伸ばす。

「ん〜!これ美味しい!!」
「何食べてるの、真尋」
「つねさん特製お稲荷さん」
「へぇ、僕にも頂戴」
「ん、どーぞ」

そう言って私は隣で口を開けて待っている総司に、食べかけである稲荷をあげる。

「どう?」
「うん、これいいね」

でしょでしょ〜と笑いながら、箸を進めれば、平助がうーんと唸りながら私達を見ていた事に気付く。

「どうしたの、平助?」
「へ!?い、いやぁ…」
「隠し事してたら後で困るよ」
「うわぁぁあ、言うから!言うから二人して迫ってくんな!」

そう言うと平助は、小さくため息を吐きながら口を開く。

「前から思ってたけどよぉ、お前らって仲良すぎだよな」
「何だそんなことか」
「どうしてだよいきなり」
「どうしてってなぁ…!普通稲荷は新しいの渡すだろ!」

…………。

「あぁ、なるほど」
「それは思いつかなかった」
「何でだよ!」
「だってそれが僕たちの普通だからね」

そう。私達は相手が欲しがったものは何でも半分こするし、そうじゃなくても半分こする。
そうすることが当たり前になったきっかけは――

「おう、近藤さん!そろそろ団子食べて良いか!?」
「いいとも!…が、新八。ちゃんと皆の分も残しておくのだぞ」
「わぁってるよ!!」

――近藤さんだ。
試衛館は貧乏道場という言葉がぴったりだ。
ただでさえ貧乏なのに、稼ぎのない食客が数人。
…家計は火の車どころではない。
それでもこうして花見をしたりするのは、やはり江戸の出が多いからなのだろうか。

まあそれは置いとくとして、そんな酷いときは明日の食事さえもままならない生活の中で、当然おかずが満足に食べられる訳もなく。
成長期の私達にとって少し辛い時もあった。
それでも私達の食べる分が無くなることはなく、当然のようにそれを食べていた。

だから。
気が付かなかったんだ。
近藤さんが、私達のために自分の分を減らしていたなんて。

私達はそれに気付いてから、すぐ近藤さんに言った。

『近藤さん、僕達の分も食べて下さい』

でも近藤さんは私と総司の申し出をやんわり断る。
私達が気付くより前から……土方さんが近藤さんと分け合っていたから。

私達はそれが何だか悔しくて、気付けなかった自分達を責めたりもした。
近藤さんに関しては土方さんに勝てない。
私でさえも土方さんに対して少し複雑な思いがある。
一緒にいた時間が長い総司は、もっと複雑なものを抱いている。

そんなことから私達の「半分こ」は普通になったのだ。

食事に関しては近藤さんは絶対受け取ってくれないので、私達は近藤さんの役に立つもっと何か別の方法を探している。

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