不思議の国の
「やあ名前。僕はリドル」
ウサギの穴に落ちた名前を迎えたのは、追いかけてきた白兎ではなく不思議な少年でした。紫とピンク色の猫耳と尻尾の生えた少年は、ニヤリと笑って言うのです。
「困ったら僕を呼びなよ。助けてあげる」
ただし、と続いた言葉はよく覚えていないのです。

ベラトリックスという名のハートの女王に追いかけ回された名前は、どうしようと慌てふためきます。みんなみんな、名前を追いかけてくるのです。どうしよう、どうしよう!
そのとき名前はあの不思議な少年を思い出しました。
「助けて、リドルっ、!」
「やあ名前。お困りかい?」
突然現れてそうやってまた笑う少年に名前は驚く隙もなく、どうしようと相談します。
「僕の側にいるなら助けられるよ」
ニコニコと今までと違った爽やかな笑顔で、彼はそう言うのです。後ろから迫ってくる緑色の光と、沢山の足音に名前は少年の言葉に頷きます。
「助けて!お願い!」
うん、と少年が杖を振れば、目の前はあっという間に大きな屋敷。どこだろうと辺りを見回していれば、少年の耳と尻尾は無くなっていました。
「ねえ、ここは?」
「僕の家。そして今日からは君の家でもある」
「え?私、お家に帰らなきゃ」
「帰さないよ。君は僕のものだ。これからずっとね」
ほら幸せだろう?と笑う少年に、名前はとんでもない人に助けを求めたことに気付くのです。
katharsis