ピノキオな彼女
蛇寮の男子部屋。その一部屋で、イケメンで優等生と名高いトム=リドルとその恋人の名前が向かい合って座っていた。
もちろん、人気者のリドルと付き合うのはリスクが伴う。現に、名前は女子によって魔法をかけられていた。
リドルが名前に笑いかける。

「ねえ、名前。僕のこと好きだよね」
「…嫌いだもん」
ニョキニョキ

「名前。僕と女の子喋ってたら嫉妬する?」
「…しない」
ニョキニョキ

リドルの問いに答える度に名前の小さな鼻が伸びてゆく。リドルはクスクスと笑うが、名前の顔は真っ赤だ。

「いいね。暫くこのままでいてよ」
「やだっ」
「嘘がつけないから?」
「ち、違うもん!」

ニョキニョキとまた伸びる鼻にリドルは満足そうに笑うのだ。いつも本当のことをリドルに隠してしまう頑固な名前が、嘘をつけないのだからリドルとしても今の状態は悪くない。

「やだもん、こんなの」
「なんで?」
「…」
「僕が嫌いになると思うの?」
「違うもん」

鼻は伸びない。

「じゃあ…男にモテたいとか?」

少し冷たくなった声に、ふるりと体を震わせながら名前はまた否定する。鼻は伸びない。

「じゃあなんで」
「………っ…ぁわ」
「なに?」
「リドルと尚更釣り合わなくなる!」

顔を真っ赤にして叫ぶ言葉にリドルは驚きながらも笑みを深くする。
この状態は好ましいけど、やっぱりあの女共消さないとなあ。なんて考えながら、リドルは小さな名前を正面から抱きしめた。
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