つまらない相手は一瞬で
作戦隊長であるS・スクアーロはヴァリアー内でもっとも斑がなく完成されていると言えるだろう。私も初めて彼の剣技を見たときはその美しさに胸を打たれたものだ。彼の能力の高さは彼の剣に対する向上心からだろう。誰よりも強さを追い求めるその志には心底感銘を受ける。

しかし彼の弱点を一つあげるとするならば、それは確実に彼のその向上心からの殺し方だろうか。彼の場合、相手の実力によって殺害にかける時間がそれはそれは左右される。任務時間内には必ず終わらせるのだから文句など言えはしないが。


「スクアーロさん、まだ粘るんですか」
「あ゛ぁ!此奴はまだ最終奥義を見せてねえ!!」


カメラを回したまま問いかければ、そういって楽しそうに敵を見やるスクアーロ。そんなスクアーロとは対照的に肩で息をし、身体中を血まみれにした満身創痍な標的。
そんな相手の奥の手を見たところで、たかが知れていると思うが。と内心毒を吐きながらも、続く(スクアーロの一方的な)攻防をぼんやりと見やる。

とその瞬間、相手の目つきが変わる。鋭いその目にどうやらようやく奥の手が出るらしい。スクアーロがそこまで楽しみにしているのだから、私も見てやろうとピントを標的に合わせる。

次の瞬間。


男は心臓を一突きされ、地に伏した。

「わりぃなぁ゛」

スクアーロが剣についた血を払いながら私の元にやってくる。ビデオを停止して、さっさと片付けを済ませてしまう。思いのほか、つまらないやつだった。

地に伏した標的はあの時、手にしていた剣を捨てようとしたのだ。その瞬間、スクアーロは自らの目が標的を図り違えていたことに気づいた。
彼はスクアーロの求めているものを持っていなかった。そうなれば、彼に興味などなくなってしまったスクアーロはそれこそ一瞬で彼を仕留めてしまうだろう。

「別にいいですけど、報告書はお願いしますね」
「あ゛ぁ」

彼との仕事での私の仕事はカメラを回すことぐらいだ。なんでも、ボンゴレ十代目雨の守護者に送りつける、だとか。彼との仕事で私は給料泥棒に等しいわけだが、作戦隊長である彼の命なので私には何の責任もないだろう。




悪役に徹せよ
彼が暗殺部隊にいる理由は、強さのため。
katharsis