18



仲間だと…思ってのに――

…ごめんなさい………

最低さ――

……ごめんなさい……



「………っ」

目を覚ますと…朝だった。重たい体をゆっくりと起こし、辺りを見渡した……こんなに明るい……今何時だろう…?
足を床に落とし、1歩1歩歩いて窓の外を見た。遠くに見える食堂に、人が集まってる。
…ミィーティング始まってるんだ……少し……ほっとした…かな……甲斐君や…比嘉中の皆に……会わせる顔が…ない。
私は、ベット横の棚においてる…綺麗に光る真珠に目をやった。光に当てると…薄く虹色に輝く真珠…その真珠の奥に―甲斐君の顔が見えた。
怒りと悲しみが宿った…あの瞳が――。

頬に――涙が伝う。
昨日…いっぱい泣いた筈なのに……まだ溢れて止まらない。
これから……どうしたらいいの…?もう…あんな風に笑って話してくれる事は…ないのかな…。
大好きな……甲斐君のあの笑顔が…私に向けられる事は……もうないの……?
そう思えば思う程、逢いたい気持が溢れて出す――。

私は真珠を手に取り、胸の前できつく抱き締めた。
とにかく…くよくよして閉じ籠ってても仕方ないよね…目も腫れてるし、川に顔を洗いに行こう…。

真珠を棚の上に置き、タオルを持ってロッジを出た。



***



川に着いた私は、水をすくい顔を洗う。

「………フフッ…変な顔…」

水面に映る自分の顔を見て、笑った。
目が赤くなって腫れてる…。…あんな大泣きしたの、久しぶりだったもんね…。泣いても…仕方ないんだよね……過去は…取り戻せないもの…。…とにかく…ちゃんと謝りたい…私の気持ち――ちゃんと伝えたい!…よしっ!!
そう意気込んで折っていた膝を伸ばした時、後ろに誰かの気配を感じた。

「…!!」
「……おはよう…苗字」

驚いて…目を丸くして視線を向けた先には――

「…甲斐……君…」

眉を下げ、笑う甲斐君が…私の前にいた。

「…あっ、おっ、おはよう!……あのっ!」
「昨日はごめん!!」
「……えっ?」

私の言おうとした言葉を先に言われて、私は呆然とした。

「昨日…跡部が全部話してくれた…この合宿の事…」
「…景吾が?」
「…あぁ」

どうして……話したら意味がないんじゃ……もしかして――

「ぃやーも…苦しんでたんだよな…わったーに話す事も、跡部に相談するのも出来なくて…それなのに…わん…最低とか言って……じゅんにごめん!」
「いいよ!謝らないで。甲斐君は何も悪くないもん。知らなかったんだから仕方ないし」

頭を下げて謝る甲斐君に駆け寄って、顔を覗いた。

「それに…」
「…?」
「私…甲斐君が…私に笑いかけてくれた。…それだけで…本当に嬉しいから……」
「……苗字」

私は涙を流しながら…笑って言った。

「また…私を『仲間』だって……言ってくれるかな?」
「…ああ!」

甲斐君が笑って手を差し出してくれた。
その手に触れようと、手を伸ばした…とき――

「―、ッッ!!」
「…苗字?」

胸がぐっと苦しくなった。心臓を鷲掴みされた様な、そんな苦しみ。

「ゴホッ…ッツアァッ…」
「おい!苗字?!苗字!!」

息が…出来ない…。

「苗字!!苦しいんば?!」

意識の朦朧とする中…私の名を呼ぶ甲斐君の声だけが――聞こえた。



***



いきなりの出来事だった。さっきまで、泣いて…頬を赤めて笑った苗字が、真っ青な顔して苦しんでる。
とにかく、わんは苗字を抱き上げロッジに向かって走った。

前にもあった……森で真っ青になって倒れてた苗字。あの時より…辛そうに胸を掴んで苦しんでる。わんに心配させないように、消えいりそうな声で大丈夫と呟く……それなのに、わんは苦しむ苗字に何て言葉をかけていいかわかんねえ…。
ただひたすらに……ロッジに向かい、走った――。

「……、跡部!!」

管理小屋の前に、食事を持った跡部が居た。多分、くぬひゃーのものだろう。
わんの声に跡部が気付いてこっちを振り返り、腕に抱かれ、苦しんでる苗字を見て血相を変えた。

「名前!!」

持っていた食事を地面に落とし、わったーの前に駆け寄った跡部。

「いきなり苦しみだしたんさ!」
「、ッ!おい、樺地!」

その言葉に、どこからともなく氷帝の樺地が姿を現した。

「タオルと水を持ってこい!」
「ウス!」
「名前を中へ運べ!」
「わかったさ!」

わったーは急ぎロッジに入り、苗字をベットに寝かせた。

「名前!しっかりしろ…」

跡部の言葉に、真っ青な顔で頷く苗字。

「薬は?」

力なく首を横に振る苗字を見て、舌打ちをする跡部。
…あにひゃーに何がおきてるんだ…?
その後、タオルと水を持って来た樺地がロッジに入って来た。跡部が…必死に苗字の看病をしてる。わんは…その光景を…ただ見ているしか出来なかった―。

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