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「よし、全員集まったな。これからこいつらの送別パーティを始める」
「どうもっ!」
「皆、ありがとう」

日が沈んで、パーティが始まった。仕切っているのは、やっぱり景吾。
辻本さんと私は、皆の拍手を受けて礼を返した。

「料理は先生方にもらった食材で存分に用意してある。遠慮せずに食え」
「誰が遠慮なんかするかっての」

今にも食いつきそうにしてる丸井さん…と言うか殆ど皆かな?
この島に来てから魚・野菜が主食だったからね。目の前に並んでる、豪勢な料理に目がキラキラしてる。

景吾が乾杯の音頭を取ってパーティが始まった。
私達は皆に囲まれ、楽しくお喋りしながら時を過ごした。
焼肉ーー!とかうまいぞーーー!!とか叫ぶ声がそこかしこから聞こえてくる。
ここに来る前の、船でのパーティを思い出される。
あの時は、こんな事になるなんて思ってなかったけど…あの船に乗って、この島に来て…甲斐君と出逢って…本当に良かった。

「楽しんでるか、名前」
「あっ、景吾!うん、楽しんでるよ!」
「そうか。ならよかった」

料理の乗ったお皿を、私に差し出してくれた。

「…景吾」
「ん?どうした」
「…本当に、ありがとう。いつも、私の事心配してくれて」

渡されたお皿を受け取り、私は言った。

「…昨日、比嘉中の皆に話をしたのって…私の為にしてくれたんだよね…ほんと…ありがとっ」
「…ばーか。俺様が勝手にやった事だ。お前にお礼言われる筋合いはねーよ。それに、遅かれ早かれあいつらにはバレてたさ。だから、お前は気にすんな」
「…うん、そっか。……でもありがとう。いつか…お礼しなくちゃね!」
「……」
「…景吾?」

景吾は微笑みかけて、私の頬に手を添えた。

「…お前がそうやって笑っていてくれれば、それでいい」
「………景吾」

自然と溢れる笑顔。
……本当に――ありがとう…景吾。

「楽C〜!名前ちゃんも楽しんでる?」

料理片手に私の元に駆け寄って来たのは、珍しく起きてるジローちゃん。

「楽しんでるよ〜!」
「ねぇねぇ!名前ちゃん明日帰るんでしょ?」
「うん」
「じゃあさ!名前の歌、最後に聴きたい!俺、船で寝てて聴きそびれたんだ〜」

猫の様に私にすがり付くジローちゃん。

「ふふっ、わかった。ちょっとだけね」
「マジで!嬉C〜〜!!」

その声を聞いて、氷帝のメンバーが皆が…甲斐君が私の方をみる。
歌…私が…大好きな歌――
この歌で……私の想いを響かせたい――

 他愛ない言葉 何気なく笑う君
 触れるたび 君の事が知りたくなる
 限りあるこの生命(じかん)
 残された時を 君とともに

 そう思うたび 想いあふれて
 とまらない
 たとえ小さく儚い光でも
 信じて進んで行ける

 七色に光る
 君からの贈り物があるから

 海の彼方に見た未来
 その先を君と一緒に歩きたい

 elpis phoos 君は私の希望の光


いつの間にか、皆が私の歌を聞いていた。終わった瞬間、拍手の嵐が沸き起こった。

「スゲースゲー!俺感動したC!!」
「さっきのオリジナルの歌詞ですよね、苗字先輩」
「何か…恥ずかしくなる様な歌詞だな。けど、お前の気持ちとかすっげー入ってたと思うぜ」
「…へへっ、ありがとう」

歌い終わって、心臓ばくばく言ってる。
ちゃんと歌えたかな?…ちゃんと想い…届いたかな…。

「………」
「…裕次郎、ぼけっとしすぎさ」
「えぇ?!ぬー、ぬーがや凛」
「動揺しすぎですよ、甲斐君」
「しっかし相変わらず上手さよ〜苗字」
「特に今夜の歌は…ね。一体誰に送った歌なのでしょうね…」
「………」



***



「おい、全員集まれ!記念写真を撮るぞ」

皆がわいわい騒いでると、カメラの横に立った景吾が言った。
セットしたのは…樺地君なんだろうね、多分…。
ぞろぞろとカメラの前に集まる皆。

「ふむ、まあいいでしょう。確かに記念ではありますしね」

私と辻本さんの並んだ後ろに木手君の声が聞こえた。
…という事は、甲斐君も横にいるよね………どうしよう…すっごく恥ずかしい…。

景吾が柳沢さんにシャッターを押すように命じる。
快く引き受けた柳沢さんは、カメラを覗き込む。

「いくだーね、1足す1は?」
「「「にぃぃ〜〜〜〜〜」」」

皆で声を揃えて言った。私も辻本さんも元気いっぱいに!

「…あぁーー!俺が入ってないだーね!!」

今更気付いたのかと、皆で笑った。
もうすぐ…パーティが終わる…。

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