03


「……んっ……」
「おっ、気がついたば?」
「…ここ…は…」

目を開けると、私は甲斐君に抱きかかえられてる状態で慌てて重たい体を起こした。

「悪ぃ。ボートそんな広くないからさ…」
「ううん!こっちこそごめんね」

恥ずかしくて私は辺りを見た。
見渡す限り青い海。…そうか、確か嵐にあって、私…

「…ぃやー、気分はどうだ?」
「あっ、平気だよ。ありがとう。助けてくれて」
「まぁ、あの状況じゃ誰だってな…」

照れているのか視線を逸らしてそう言った甲斐君。

「でも、ぃやーよく飛んだやー。大した奴さ」

金髪の子がオールを漕ぎながら話しかけた。

「あのままじゃ、いつか落ちると思ったし…それに、飛べって言ったの甲斐君でしょ?」
「あぃ?わん、ぃやーに名乗ったか?」
「あっ、2人がそう呼んでるの聞いたから」

そっか、と言って改めて名前を教えてくれた。
私も自分の名前を名乗り、2人にも名前を聞いた。
金髪の綺麗な子が平古場凛君で、眼鏡をかけた子が木手永四郎君。
皆、私と同じ中学3年生。…でも、それ以上の事を言ってはくれなかった。
…3人とも、俺達に関わるなって言っている様に感じた。

「このまま行くと、あの島に辿り着きそうですね」

木手君の視線の先を見ると、緑の生い茂った孤島が見える。
海に面している所に浜辺があって、そこから上陸できそうだ。



***



孤島に到着した私達。
着いた途端、3人は島を散策するのか私を置いてどこかへ行ってしまった。
私も他の人達に合流する為、浜辺を歩いた。

すぐ人には会えた。船に乗っていたテニス部の人達。
氷帝の子とも合流できて一安心していた。

私が皆と話していると、私達が着いた所とは逆の所に漂着したのか景吾が小日向さんと辻本さんを連れてこっちにやってきた。

「景吾!」
「っ、名前?!…お前、何でここに…」
「ちょっと船から落ちそうになって、その時比嘉中の人達に助けて貰ったの」
「船から落ちそうになっただ?」
「あ〜うん。あの後、いつものが来てね…」
「いつものって何だよ、苗字」

私の言葉を不思議に思った岳人が聞いてきた。
この事は、私と景吾しか知らないから仕方ないけど…

「ん〜、ちょっとね…」
「何だよ、別に教えてくれたっていいじゃん!」
「まあまあ岳人、その辺にしとき。跡部が睨んどるで?」

侑士が岳人を離れた所へ連れて行った。他のメンバーも気を利かせてくれたのか、皆そっちへ行った。

「とにかく、どうするか…お前は先生達と合流するか?」
「でも、私が居なくなったら皆不思議に思うし。サバイバル合宿中止にする訳にはいかないでしょ?」
「でも、お前――」
「私なら大丈夫だよ!…心配しないで」

そう、笑顔で答えた。
こう言った私は、誰が何と言おうとも意見を曲げない。
景吾もその事を知っている。

「…何かあったら、すぐ俺に言え。…無茶だけはするな」

溜息一つして、私の頭をポンと叩いた。
私達は浜辺に集まり、それぞれ行方不明者が居ないか確認を始めた。

「待たせたな。そっちは全員いるか?」
「ああ、青学は全員無事だ」
「六角メンバーも欠員なし!」

各学校の部長が点呼をとり、互いに報告し合っている。
今の所、行方不明の人はいないみたいだ。
私は小日向さん、辻本さんと一緒に少し離れて皆を見てた。

「ん?おい、そこのお前ら」
「それは、俺達に対して言っているのかな、跡部くん」

景吾が言った先には比嘉中の3人がいた。散策から戻ったんだろうか?

「他に誰がいる。どこに行こうとしてやがるんだ」
「決まってるだろー。こんなトコにいつまでもいても、しょうがないんだからよ〜」
「やったー、海の事何もわかっちょらんなー。この島、潮が満ちたら沈むぜ」

木手君の後ろにいた平古場君と甲斐君が口を開いた。

「だから、今の内に向こうの大きな島に移動するんですよ。わかりましたか?」
「この島が沈むにしても、まだ時間はあるだろうが。勝手に行動するな」
「おやおや、いきなり命令ですか」

木手君と景吾の言い合い。
…にしても、どうしてそんなつっかかる言い方するんだろう?
景吾の命令口調は、初めての会う人にはちょっとムカっと来るかもしれないけど、それだけじゃない……何て言うんだろう。警戒心?私達とは一線をひいている。

とにかく、今は行方不明者の確認を急ぐ事になった。



***



確認の結果、選抜メンバーは全員揃っているようだ。
ただ、先生達、そして船長さん…小日向さんのお父さんは確認できなかった。

「お父さん…」
「つぐみ…大丈夫、きっとみんな無事よ。そう信じましょう!」

不安になってる小日向さんを辻本さんが励ましてる。
自分の父親が行方不明になってるんだもん。そりゃ心配になるよね。
ごめんね、騙しちゃって…。

「そうだよ!それに頼りになりそうな男の子達がこんなにいるんだもん。きっと見つかるよ」
「そっ、そうですね…」

ごめんね。今は、こうして励ましてあげる事しか出来ないんだ。

「とにかく向こうの島に行くか。話はそれからだ」
「だから、最初に言ったでしょう。人の忠告は次回からは聞いておくべきですね」
「チッ」

…一触即発?何かこの2人、さっきから険悪ムード…。
比嘉中の3人はさっさと自分達の乗って来た救命ボートで島に向かった。
私達も後を追い、本島を目指した。

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