04


本島に到着した私達。
浜辺に足を下ろし、島を眺める。

「とりあえず到着だな。…ん?比嘉中の奴らはどこ行った?」
「ああ、彼らなら着いたとたんにさっさと先に行ってしまいましたよ」

周りを見渡して言う景吾にルドルフの観月さんが言った。

「アイツら…何とかしねえとな」
「うん。少し勝手な行動が多いな。これでは…」
「まあいい。後で話はつけてやる」

景吾と手塚さんが困った顔で話している。
確かに、勝手に動き回られると本来の目的に支障がでちゃうよね。
私も少し比嘉中の人達と関わったから、それとなく話してみるかな…。

とにかく私達は合宿所のある所へ向かった。
さっき居た孤島からロッジが見えると立海のジャッカルさんが言ったからだ。
あそこからロッジが見えたっけ?凄い視力だよね…。

「ほう、なかなか面白い植生だな」
「ああ、亜熱帯の植物もあれば温帯の植物も混在している。海流の影響だろうか」
「むしろ、この場合の亜熱帯植物は鳥による伝播と考えた方が良くないですか?んふっ」

ロッジへの道を歩いていると、前の3人がそんな話をしていた。
見ただけでどこに生えてる植物なのか分かるの?
私と宍戸は顔を合わせ苦笑した。…3人とも分析好きらしい。



***



少し歩くと、ジャッカルさんが見たと言うロッジに到着した。
広場を囲むように小さなロッジがいくつも建っていて、脇の方には炊事場・食堂・洗濯物を干せる空間がある。

「遅かったですね、皆さん」

先に来ていた比嘉中の3人が、ロッジの方から出てきた。

「木手!勝手な行動ばかりとるな!」
「何いっちょーみ。やったーがトロくさいから、わったーが先に状況を調べてただけさ」
「そういう事」

不動峰の橘さんの言葉に、食いつく様に言う平古場君と甲斐君。

「おい、お前ら――」
「景吾、まずは先生達の安否を確認しないと…」

注意をしようとした景吾を制して言った。
3人の言う事にいちいちつっこんでたら、話が先に進まないよ…。

「…そうだな。それで、監督達は居たのか?」
「いえ、いませんね」
「くたばってんじゃねえの」
「何だてめぇら!その言い方は!!」

そう言った甲斐君に六角の黒羽がつっかかったが、景吾が止めに入った。
とにかく、鍵が掛かっていないと言うロッジに皆で行く事になった。
私は、甲斐君の言葉が胸に痛んだ…。

『くたばってんじゃねえの』

…冗談でも、そんな事言ってはいけないよ…。甲斐君にとって、人が居なくなるって…そんなどうでもいい事なの?

「…?どうしたんだ苗字。行くぞ!」
「…うん」

立ち止まってた私に宍戸が声を掛けた。私は微笑み、皆の所へ急いだ――。



***



ロッジに入ると机やタンス、ベット。
寝泊りできる環境にはなっているが、そこら中埃が被っていて誰も使った形跡はない。
手塚さんがそう言ったのを、だから言っただろと平古場君が返す。

この島は榊先生のグループが所有しいるレジャー施設。
ここ1ヶ月は誰も使用していないらしい。だからここを合宿所にしたのか、と皆納得した

部屋を調べていると、この島の地図と鍵の束が見つかった。ここは管理小屋になるみたい。皆で手分けして他のロッジも調べる事になった。

どのロッジも使われた跡はなく、先生達も発見できなかった。
私達は食堂に集まり、これからの事を話し合った。
乾さん、柳さんの推測でうまくいけば5日前後で救出されるだろうと言っていた。
とにかく、皆昨日から何も食べていなかったので手持ちの食材でご飯を食べる事になった。
担当は私達女3人。辻本さんの料理は見た目が…だけど凄く美味しかった。小日向さんも上手だ…私も出来る方だと思ってたけど…まだまだだな〜。

その後、食料調達などの効率を上げるためグループを2手に分ける事になった。
山側を手塚さんがリーダーとし、景吾が海側のリーダーに。
皆どっちに行こうか話している時だった。

「ちょっと待ってもらえますかね、跡部君」
「…何だ木手」
「我々の事無視して、色々と勝手に決めている様ですがね…我々比嘉中は、キミ達と一緒に行動するとは一言も言ってませんよ」

彼らはこの島が沖縄に近いので、海の事を知らない私達と居るのは嫌だと言ってきた。
確かに、私達は海の事そんなに知らないけど、知らないからこそ協力が必要なんだと言うが、彼らは受け入れようとしなかった。
協調性のない人を無理矢理従えさせても空中分解すると言った景吾は、彼等が好きにするのを認めた。

「大丈夫なの?景吾…」

傍に寄り、小さな声で尋ねた私に、心配するなと微笑んだ景吾。
まあ、景吾がいけるって言うなら大丈夫なんだろうけど…。
比嘉中の3人はすこし離れた所にポツンと建っているロッジを使う事になり、彼等は去っていった。

3人が去った後グループ分けをし、どのロッジを誰が使用するかも決まった。

「よし、大体決まったな」
「あの…私達は…」
「どうすればいいですか?」

小日向さんと辻本さんが景吾に尋ねていた。

「お前達は無理に俺達を手伝う必要はねえ。二つの合宿所のちょうど真ん中に管理小屋がある。あそこなら設備も整ってるから、そこでゆっくりしてろ」
「そんな訳にはいきません!こんな大変な時なのに…」
「私達もお手伝いします」

全く無関係な彼女達が協力してくれようとしている。
景吾はじゃあ、と言って小日向さんは山側のお手伝い、辻本さんは海側のお手伝いを任せた。
比嘉中の人も2人の爪の垢でも飲んでくれればいいのに…。

「名前」
「ん?何?」
「お前は海側だ。だが、無理に手伝おうとするな。分かってるな?」
「な〜に、私だけ仲間はずれ?」
「そう言ってるんじゃねえ」

分かってるよ。…でも、私も何かの役に立ちたいもの…。

「大丈夫。無茶しないって言ったでしょ?だから私にも手伝わせてね」
「……わかった」

そう言って、皆各ロッジに荷物を置きに行く事になった。
私は小日向さん、辻本さんと一緒に管理小屋に泊まる事に。

「あれ、苗字さん。荷物はどうしたんですか?」

何も持っていない私に辻本さんが尋ねた。

「あっ、船に全部置いてきちゃってさ」
「えっ?!じゃあ、着替えとかどうするんですか?」

そう、それが問題。
海から落ちそうになって、そのまま助けられたから荷物なんて持っていない。
服はキャミソールに薄手のワンピースにパーカーに5分のパンツ。着回ししたら大丈夫だけど、下着が問題…。
何日も履いていられるわけないし、かと言って替えがないから洗濯している間何も履かないのも無理…。
それと、一番無いと困るのは――薬。
あれが無いと発作起きた時、なかなか抑えられない。何十分も苦しい思いをする事になる。
それに、皆に心配かけたくない。この事は景吾以外知らないのだから…。

「ほんと、どうしようかな〜?」
「…じゃあ、私の服使って下さい」
「下着だったら、私卸したてなのでコレ使って下さい!」

そう言って自分の衣類を差し出してくれた。私は有難くそれを受け取った。
これで着る物は何とかなったな。
薬は…どうにもならないし、とにかく発作が起きたら皆に気付かれないように頑張ろう。
私達は荷物を置き、各食堂へと向かった。

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