「なぁんか今日マスコミ凄かったねー」
正門の前に群がる報道陣の話で持ちきりの教室。
なにやらオールマイトのひとことほしさに頑張っているらしい。
「名字さんは朝大丈夫でしたの?」
『全然余裕、個性つかったからね』
心配する百ちゃんに向かって
わざとらしくてへぺろ、と舌をだした。
「さすが名字ちゃんやね!」
外に群がるハエ…のごとく報道陣によって朝からバタバタ続きの雄英高校。
今日はクラスの学級委員決めをするらしい。久しぶりの学校っぽさにみんな浮き足だっていた。
結局投票ということになったが、
みんなふざけているのか自分に一票率の高さがすごい。
(いや、学級委員といえばメガネじゃないの?)
そんな私は飯田くんに入れたが、
結果は緑谷くんになったようだ。
正直あんまり興味なし。
お昼のチャイムと同時にみんなが食堂へ急ぐ。
「名字ちゃん、食堂へ行きましょう。ケロ」
『梅雨ちゃんごめん!相澤先生に呼ばれてるから先に行ってて〜』
朝に呼び出しがあったことを思いだし、
梅雨ちゃんにジェスチャーで両手を合わせる。
『なにもお昼に呼びつけなくてもいいよになぁ』
ブツブツ言いながら職員室へと急ぐ。
(早くしないとお昼抜きになっちゃう)
階段を降りていると、正面から爆豪が登ってきた。あの日からなんとなく前みたいな喧嘩はなくなった私たちは普通に挨拶が交わせるようになった。
「ヨォ」
『おつかっ…!!』
手すりから手を離した瞬間、
階段を踏み外してしまった。
グラリとバランスを崩し、
行き場を失った右足が空に浮く。
「あっぶね!!!」
『っっ!』
(……いたく…ない)
完全に落ちたと思って咄嗟につむってしまった目を開くと。
正面に爆豪の顔面。
前から抱き抱えられるように支えられていた。
後ろに回された爆豪の手が…私のおしりに……しかもスカートの下から直に…!!
『離せバカっっ!!』
支えてもらったのにもかかわらず、
羞恥から爆豪に渾身の平手打ち。
「テメッッ!!」
ドタドターッッ
『ごめんなさい…』
「殺すぞテメェー!」
結果、ふたりとも階段から転げ落ち
彼の頬には真っ赤なモミジ痕。
「テメェは怪力か。女子の平手のレベル越えてるわ」
ジンジンと痛む頬に手をやり睨む。
『だって爆豪おしり触った。直に…』
「っ!!テメェがそんなクソ短ぇもん履いてるからだろーが!!」
顔を真っ赤にしながら反論する爆豪。
ウォーンウォーン
構内に流れる警報。
侵入者を告げる放送がけたたましく鳴り響いた。