usj


報道陣の侵入騒ぎから数日後

今日はusjでの、特別授業。
みんなでバスに乗り込み、わいのわいの。

到着したそこは、とても高校の敷地内とは思えない広さのドームだった。

『さすが雄英。なにもかも規格外…』

呆気にとられていると、プロヒーローの13号と相澤先生。
本当はオールマイトもくるはずだったらしいが、ちょっと来れなくなってしまったらしいとのこと。

長々とした施設内の説明をぼんやり聞いていた。

『っっ!』

黒い靄の中から現れた本物のヴィラン。
その禍々しい雰囲気に、圧倒される。

そんな中で、爆豪と切島が飛び出していったことに激しく動揺した。

(……なんで…飛び込んでいけるの)

私の位置からはヴィランがなにを言っているのか分からない。
突然に真っ黒な靄に包まれ、
目をあけると目の前に気持ちの悪い手首を顔面に張り付かせた男が立っていた。


『っだれ!』

「黒霧のやつなんでここにひとり飛ばすんだ…」

指の隙間から覗く忌々しい目。
本物のヴィランを目の前に、足がすくんでしまう。

「まぁいいや、殺すか」

ゆらりと近づいてくるそいつに、
背筋が凍る。

(嫌だ、無理だ、私じゃ…勝てない)

Booom!!

遠くで聞こえた爆発音に、ハッと我にかえる。

(違う、みんな…戦ってるんだ!!)

体を構え、近づいてくるそいつを睨み付ける。

「お前、生意気な目してるなぁ」

気持ちの悪いの声。
向かってくる手をギリギリで避けて、
渾身の力を振り絞って後頭部に飛び蹴りをかます。

(よし、触れた!!)

「いたいなぁ……」
ボロッと顔面の手首が剥がれ落ちる音。

『貴方、名前は?』

ドキドキとする心臓を、押さえ込み
問いかける。

「…俺は、死柄木弔だ」

(いける!…このまま…!)

ゆらりと顔をあげる死柄木と名乗る男。

『弔、私の言うこと聞いてくれる?』

強気に、強気に…
全神経を研ぎ澄ませてジリッと彼に近づいていく。

「お前、可愛いなぁ…」

「あれ、おれ何しにきたんだっけ?」

(よし、効いてる。このまま自滅させれば……っ!)

「まぁいいか、お前の言うこと?聞いてあげるよ」

「いや…違う。そうだお前は俺の物だ。俺の物にしよう…」

『っ…!!』

手首の剥がれたその瞳。
生気の宿らないその目が私をうつす。
こわい、こわい…こわいっ

「……っ!手!手がない、どこだ」

(しまった…!!)

先程の蹴りで吹き飛んだ手首を探し、
見つけるとすぐさま顔面に張り付ける彼。

(私のバカ!…個性が解けた…)

「なんだぁ?…いまの?お前の個性か?」

ガクガクと震える足。
ジリジリと近寄る、男。

「お前中々いい個性持ってるなぁ、そうだ…お前は連れていこう」

『……っ!い、いや!』

完全に怯えてしまった私に勝機はない。
その場に倒れこみ首を横にふる。
ニィィと口角をあげ、手を伸ばしてくる男。

(やっぱりダメだった…)

ズドォォォン!

「きたか、オールマイト……」

「名前少女!大丈夫か?!!」

『オール…マイト…』

そこに死柄木という男の姿はなく、
私はオールマイトに抱き抱えられていた。
情けないことに足腰が立たない私をゆっくりと地面におろしてくれた。

「こわい思いをさせたね。もう大丈夫だ。私が来た!」

その台詞にポロポロと大粒の涙が溢れる。