第3話

「よし!揃ったな!」

ナルトが腕組みをして立っている。ナルトに対面して、木ノ葉丸、ハジメが並び、後ろにはそれぞれボルト、サラダ、ミツキ、そしてコウライ、リッカ、イブキが並んでいる。

「今回の任務は木ノ葉丸班、ハジメ班の合同任務だってばよ!」
「内容については俺から説明する。」

ナルトの傍らに立っていたシカマルが進み出る。

「場所は霧隠れの里。封書を届けてほしい。他里を訪れる貴重な機会だ、しっかり学んでくるように。これがその封書だ。」

シカマルはそう言って、ふたつの巻物を取り出した。

「封書はふたつでひとつだ。これをひとつずつ任せる。中はどちらも超機密事項だ。決して人目に触れないよう、水影の使いに届けてくれ。使いとは合図を決めてある。それについては…木ノ葉丸、ハジメ、問題ないな?」
「任せとけ、コレ!」
「問題ありません。」
「よし。」

シカマルは頷いて、ふたつの封書をそれぞれボルトとコウライに手渡した。

「頼んだぞ。」
「おう!」
「楽勝だってばさ!」

「では、散!」

シカマルの合図で、ふたつの班はその場を飛び立った。


雑木林を駆け抜ける。まずは一つ目の休憩地点を目指す。枝から枝へと飛び移りながら、リッカはふと、体に違和感を感じた。

「リッカ。」

ふっと隣に降り立って、並んで駆け出したのはサラダだった。

「いつもより遅いけど、どしたの?」
「え?」
「そういえばちょっと、顔色も悪いわね。」

サラダもリッカに違和感を感じているようだった。リッカはサラダに指摘されることで、自分の体調不良を再確認した。

「ん…ちょっと、本調子じゃないかも。でも、大丈夫。」
「そう?無理しないで言うのよ。」
「ありがとう。」

リッカの調子を確かめると、サラダは自分の班のほうへ戻って行った。リッカはわずかに寒気を感じ、足に倦怠感を覚えた。おかしい。こんなにすぐに疲れるはずはない。
ハジメを呼び止めようか迷ったが、出発してすぐに皆の足を引っ張ることは避けたい。リッカは自分の体を叱咤して駆け続けた。

もうすぐ国境だ。

その時、気配がして、リッカは背後にクナイを放った。手裏剣が弾かれて幹に突き刺さった。足元が危ぶまれ、リッカは地面に降りた。

「リッカちゃん!」

コウライが慌てて引き返してきて、リッカの隣に立った。本来ならば忍んで戦況を把握するのが先決のはずだが、彼は感情が先立ってしまう面がある。しかし今はその単純さがリッカには有難かった。

「くっ!」

コウライが間一髪で手裏剣を弾き飛ばした。手には黒い連結式三節棍が握られている。これは彼の得意武器であり、彼の一族が代々愛用する武器でもある。

「リッカちゃん、俺の後ろに!」

彼なりに、リッカの調子が悪いことを感じ取っているようだった。コウライはリッカを庇うように立ち、武器を構えた。

そのとき、石のつぶてが頭上から降り注いできた。

「ああっ!」

コウライは咄嗟にリッカに覆いかぶさり、庇おうとした。しかし頭上をビュッと風が横ぎり、見上げると、石つぶてがまるまる吹き飛ばされていった。イブキだ、とコウライとリッカは確信し、安堵した。彼はどこかから見てくれているらしい。

また気配がして、リッカは素早く印を結んだ。

「氷遁・水鏡!」

リッカとコウライを取り囲むように、いくつもの氷の盾が現れた。盾には周りの景色がそっくりそのまま映り込み、見分けがつかないほどだ。そこへ放たれた無数の手裏剣が、盾に弾かれてそのまま跳ね返った。この技は受けた術を忍術・体術関係なくそのまま放たれた場所へ跳ね返す。無数の手裏剣は一か所に収束し、木の影を目掛けて飛んで行った。
しかしそこにはもう誰の姿もなく、手裏剣は全て木の幹に突き刺さった。

「くそっ、どこだ!?」
「……。」

リッカは考えた。襲われる理由――思いつくのは一つしかない。封書だ。

「リッカちゃん、とにかくみんなの所へ……」

コウライがリッカの腕をつかみ、その場から飛び立とうとした。しかし地面が揺れ、それは叶わなかった。先ほどの石つぶてといい、敵は土遁の使い手らしい。地割れが起き、ちょうどリッカとコウライの間でヒビが割れた。リッカの足元が沈み、危うく落ちそうになったリッカを、コウライが腕を掴んで引き留めた。

「コウライ君……」
「だ、大丈夫、大丈夫…すぐ引き上げるから!」

コウライはそう言うが、まだ地面は揺れており、自分が落ちないよう踏ん張るのが精いっぱいのようだ。封書はコウライが持っている。リッカは嫌な予感がした。その時、コウライの背後に、人影が忍び寄った。

「え……?」

急に影になったことに気づいたコウライが、振り返る瞬間。
リッカは、ぶら下がっている左手で素早く印を結んだ。

「氷遁・氷槍!」

鋭い一本の氷の槍が、人影目掛けて飛んで行った。人影は間一髪飛びのいて術を避けたが、ひとまず封書を守ったことでリッカは安堵した。そのとき、二人の前にハジメと木ノ葉丸が降り立った。

「二人とも!よくやったなコレ!」
「コウライ、リッカを頼んだよ。」

「先生!」

コウライは顔に安堵を浮かべ、リッカを引き上げた。そこへ、イブキを先頭にボルト、サラダ、ミツキもやってきた。
数で不利と悟ったか、人影はすぐに森の中へと消えていった。

「あっ!逃げた!」

サラダが声を上げる。

「追いますか?」

イブキがハジメに問う。

「いや、無理に追うことはない。ふたりとも、怪我はないか?」
「はい。」
「おう。」

「ここからは慎重に進もう。森を抜けたら、警備の多い街道があるはずだ。」
「まとまって移動するぞ、コレ!」
「はい!」

「リッカ、大丈夫?」

サラダがリッカの元へ駆け寄ってきて、こっそりと尋ねた。

「え?うん、怪我はないから…」
「そうじゃなくて!顔、真っ青だよ?やっぱりどこか悪いんじゃないの?」
「え……あ……」

言われてみると、すこし頭がくらくらした。それからお腹が少し痛い気がする。

「なんだろう……風邪…かな?でも、本当に大丈夫だから…」

リッカは誤魔化すように笑って、これ以上の追及を逃れるようにサラダから離れた。

「あ、ちょっと!…もう!無理しないでよ!」

サラダは呆れ半分、心配そうに言って追いかけるのだった。

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