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担任と課題について話してたら少し帰りが遅くなってしまった。
今朝は晴れてたのに、昇降口で靴を履き替えて空を見上げたら若干曇ってる。別に後は帰るだけだし良いけどさぁ。

「あー絵藤じゃん!今帰りなんー?」

とん、と肩を叩かれたから振り返ってみれば、ニッと笑った上鳴が居た。相変わらずチャラそうだなこいつ。

「おう上鳴、今日もチャラいなー」
「人は見た目で判断したらいけないよ絵藤くん」

思った事をそのまま口に出せば、チッチッて人差し指を振られて地味にイラッとした。ので、その指を逆に倒してみる。

「いったい!もう!」
「はっはっは」
「笑いに感情篭ってないからね!?せめて心から笑って!?……あーっそうだ、これから皆でファミレス行くんだけど絵藤も来る?」

友達痛めつけて心から笑ってたらやべぇ奴だろ……。そんな奴だと思われてるとしたら心外なんだが。
っても特に気にしてないのか、突拍子も無いお誘いに話題が変わった。

「おー行こうかな。でも雨降りそうじゃね?」
「大丈夫!俺傘持ってるし!」

良い笑顔で手に持ってる傘を自慢げに見せる上鳴。いや、お前が持っててもしょうがねぇんだわ……。貸してくれるんだろか。
まぁ多少なら濡れても問題無いし大丈夫か。って事で、二人並んでファミレスに向かって歩き出した。




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カランカラン、とドアを開けた拍子に備え付けのベルが鳴った。

「俺ちょっと遅くなったからさー、たぶんみんなもう居ると思うんだよね」
「あーなるほ」

入り口で店員に先友達居ると思うんすけど、と声を掛けて通して貰う。学生御用達の安いファミレスだけど美味いんだここ。

「あ、居た。ごめーん待たせたー」
「んーや待ってない!……ってあれ、絵藤じゃん!誰かと思った!めっずらしいな!」

待たれてないぞ上鳴。俺に気付いた切島が笑って手招きしてくれたけど、俺が行くより早く上鳴が切島に突撃していった。
ぎゃあぎゃあ文句言いながらじゃれ合ってるのを見てるとつい笑ってしまう。お前らアホだろ店内でうるせぇし。
ふと視線を感じてちらっとそっちを見てみると、切島の向かいに座ってる爆豪とばっちり目が合った。

「立ってねぇで座れ」
「うぃっす、お邪魔しまーす」

必然的に空いてるのは爆豪の隣だったから、よいしょって言いながら座る。背負ってたリュックは爆豪が端に置いてくれた。優しい。
じゃれてたのにそこだけ聞いてたのか、切島にジジイかよって笑われた。

「ジジイ金ねぇから奢って若者」
「いや奢らねぇわ!」

笑いながら、取ってもらったメニューを眺める。普通に腹減ってんだよな、どうしよう何食おう。パスタセットかなーカルボナーラのやつ。
メニューをパタンと閉じて、決まったからには早速呼び出しボタンを押す。

「あっおい絵藤俺まだ決めてないんだけど!?」
「じゃあ上鳴これな、3種のチーズピザ」
「いやそれ絶対お前が食べたいだけじゃん!?」

言ってる間に注文を取りに来た店員にパスタセットとチーズピザを頼む。うぃずドリンクバー。
まじで頼みやがったし……ってうな垂れてる上鳴は放っておく。こいつがチーズ嫌いじゃないのは知ってるから大丈夫だ。

「上鳴チーズ嫌いだっけ?」
「や、すき」
「なら良いじゃん、余ったら俺も食べてやるって!」

ナイスフォローだ切島。爆豪はうるせぇなって言いながら炭酸飲んでた。相変わらずぶれませんね……。
先に着いてた二人はもう注文してたみたいで、デミグラスハンバーグとオムライスが来た。いいな、美味そう。
早速食べ始めた二人を横目にドリンクを取りに行く事にした。



席に戻って暫くしたら、店員が俺達の分も持ってきてくれた。
さっきまで文句言ってた上鳴もピザを前に上機嫌になってるからちょっと安心したのは内緒にしとく。ちなみに俺のはサラダとフルーツ付きだ。豪華。

「ばくごートマト好き?」
「あ?嫌いじゃねぇけど」
「はい」
「しいたけは」
「しいたけ俺すき」
「ん」

豪華だけど敵が居た。敵はヒーローにやっつけて貰わないとなって事で、爆豪の皿にトマトを乗せたらしいたけが返ってきた。

「お前ら夫婦みたいな事すんなよ」
「あ゛ぁ?どこがだアホ面殺すぞてめぇ」
「しいたけうめぇよ爆豪」
「うっせぇんなもん食いもんじゃねぇんだわ!」

もぐもぐしながら言ったら怒られた。俺もトマトあげてるからそれ以上は黙っとこう。
切島はひぃひぃ言いながら笑ってるし、上鳴は結局殴られてた。


帰り道、雨は降らなかった。
皆でふざけて上鳴の傘をぶんぶん振り回してたら飛んでって水溜りにダイブしたから爆笑した。
上鳴が一番笑ってて、なんかこうやって帰るのも悪くねぇなとか思ったり。




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