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いただきます、って小さく言ってから、爆豪がから揚げを食べるのをじっと見守る。自分の料理を人に食べて貰う機会とかほぼ無いから、正直うめぇかどうかそこまで自信がない。
「………まぁ、悪くねぇんじゃねぇの」
「えー!?どっちだよ!」
から揚げをもぐもぐしながら言う爆豪に肩すかしを食らった。いやうめぇって!言えよ!
「だから悪くねぇって言ってんだろが!分かれよ!」
「あ!?じゃあ素直に褒めろようめぇって言われてんだって俺は!」
「っせぇうめぇわ!これで満足か!あ゛ぁ!?」
「おお満足だ!良かったわうめぇくて!」
ふん!と鼻を鳴らして俺も飯を食い始める。盛大に舌打ちかました爆豪も食べるのを再開して、変な空気が漂う食卓になってしまった。
あーから揚げうめぇわ、自画自賛だけど今日のは美味く出来たと思う。つか、何ですぐ喧嘩になっちまうかね。いつもの事だけど、さぁ、毎度喧嘩したいなんて微塵も思ってねぇのに。
「もし、」
ぽつりと、爆豪が呟いた。いつも俺をじっと見る赤い瞳は今、俺ではなくから揚げに向いている。
「一人で食いたくなかったら俺が食ったるわ」
うめぇから、そう真剣に言った爆豪と視線が絡んで心臓が跳ねた。
「……おぉ、作り過ぎたら呼ぶから来いよ」
どうにも素直に来てくれとは言えず、作り過ぎる事なんてねぇのに天邪鬼な言い方をしてしまう。あー、変な顔になってんじゃねぇかな。
爆豪がにやにや笑ってるから、その予想はきっと当たってるんだろな。なんだよこいつまじ、恥ずいわ。
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飯食い終わった後、皿洗いぐれぇするわ、って今爆豪がキッチンで皿洗いをしてくれてる。
ソファに座ってじーっとその姿を眺めてると睨まれた。俺んちで…爆豪が…皿洗いしてる……。
「レア映像かよ」
「うっせぇ聞こえてんだわ」
水を止めて舌打ちした爆豪がこっちに来ながら文句を言ってるから、うへへって笑っといた。
そのままどさっと隣に座ったのを横目に見ながら、ふと良い事を思いついてぱしぱしと爆豪の膝を叩く。
「なぁばくごー、明日土曜だし泊まってく?」
「あ?」
折角だし、こういう機会も今後無さそうだし、何より楽しそうじゃね?
期待を込めた眼差しで見つめたら唸る爆豪。やー、嫌なんかな。やっぱ帰りてぇかな。
「嫌なら良いけど、」
「誰も嫌なんて言ってねぇだろアホ」
「お、じゃあ泊まってく?やりぃ」
押して駄目なら引いてみる作戦成功。こいつ割りとそういうとこあるよな。
上機嫌で残してたお茶を飲みながら、そう言えばと当たり前な事を思い出した。
「着替えどうする?俺のでいい?」
「…………買いに行くか」
「や、それは勿体ないだろ。気にしねぇなら俺ので良いじゃん」
そう言うとまた唸りだした。嫌、って訳じゃなさそうなんだけど、そういうの申し訳ないとか殊勝な事思っちゃうタイプだっただろうかと首を傾げる。
「チッ、……貸せ」
「苦しそうすぎない……」
めちゃくちゃ眉間に皺を寄せて低く言うから、流石にちょっと面白くて笑いながら言ってしまった。
よっしゃじゃあゲームしようぜ!って事で引っ張り出してきたハードで二人対戦をしようと意気込む。
「負けたら明日の昼飯な」
「俺が勝つに決まってんだろクソザコが」
ちなみに昔流行った格ゲーの最新作だ。爆豪もやった事はあるみたいだし、切島曰く才能マンらしいからゲームも器用にやりそうだけど、このシリーズで俺は負ける気がしねぇんだな。
開始の合図と共にガチャガチャとコントローラーを操作する音が響く。明日の昼掛けたからにはちょっと本気でやろう。
「あ゛ぁ!?てめぇ絵藤ハメんじゃねぇ!!!」
「昼飯の為だわりぃな爆豪」
壁際に追い詰めてのハメコンボ。反撃の余地も与えずに、みるみるうちにHPゲージを削って俺の圧勝だ。
「くっそてめぇ次はぜってぇ殺す…!」
「これなら負けねぇからな!」
威勢よく挑んできたものの、2回戦も俺が圧勝して明日の昼飯をゲットした。ははは暇人舐めるなよ。
ゲームでなら爆豪に負けたくない、って思うのと同時に、またちょっとだけ、今日のもやもやを思い出してた。何だろうな、この感情の名前が見当たらなくて嫌になる。
爆豪には気付かれない様にそっと溜息を吐いた、つもりだったんだけど。
「俺に勝っといて変な顔してんじゃねぇよ」
「う゛」
もやってんのバレた。
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