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ぼふっと勢い良くソファに座って、壁に掛かった自分の絵をぼけーっと眺める。頭の上にタオルを乗せたまま、これで自動で乾けば楽なのに、とかバカな事を考えてみる。
爆豪に甘えて、訳の分からない事を言ってしまった。ぜってぇきもいって思っただろうに、あいつ優しすぎねぇか……。さっきの爆豪は意味不明だったけど。

「はぁぁ……」

盛大に溜息を吐きながら天井を仰いだら、タオルがパサリと床に落ちた。
うだうだ悩んでたのがバカらしくなる程潔くいかれて力が抜けたけど、同時にめちゃくちゃ恥ずかしい。俺全然かっこよくない。や、かっこつけたい訳じゃないんだけどさ。
落ちてしまったタオルを拾う気にもなれなくて、ただ眉間に皺を寄せた。言わなくても良い様な事まで言った気がするけど、正直テンパってて何を言ったのか正確に思い出せない。やっちまった感すげぇ。

「う゛〜〜〜〜〜……」

行き場の無い感情をどうにかしたくて、唸りながらリビングに置いてる特大イルカにダイブした。ぬいぐるみ……?抱き枕かな、わっかんねぇけどそれはどうでもいいわ仮眠用だくそ。

「んでおれ、爆豪によえぇんだ……」

出会ってから今まで、あいつに勝てた回数なんて片手で数えても余裕で足りるくらいな気がする。さっき格ゲーでは勝ったけどそういう事ではなく、精神的な面で。
ぎゅうっとイルカを抱きしめながらごろごろ転がってたら、ガッとソファの角に足をぶつけてしまって悶絶。っつあ〜〜〜いってぇぇ……!
反射的にぶつけた場所を押さえて痛みをやり過ごしながら、ほんと俺何やってんだろって思う。今日一日ずっと調子崩れっぱなしだ。

全部爆豪の所為だ。
暫くしたら痛みも引いてきたから、今日何度目か分からない溜息を吐きながら脱力した。爆豪と居ると案外落ち着くけど、頭ん中ぐちゃぐちゃにされる事も多い気がする。なんだあいつ。
あー後で寝る場所作らなきゃなとか、明日何時に起きようとか、ぐるぐるとこれからやらなきゃいけない事を考えてるうちに、俺はそのまま意識を手放してしまった。





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ブー、ブー、ブー……

遠くで携帯の振動音が聞こえる気がする。少しだけ浮上した意識の中でそれだけぼんやりと認識した。もぞりと、抱き締めてたイルカと一緒に寝返りを打ったら、こつ、とおでこに何かが当たった。

「ん……」

あれ、俺いつの間に寝てしまってたんだろう……。ばくご、ほったらかしてたから怒ってっかも……。
やばいなーと思いながらゆっくりと目を開けたら、そこには爆豪のドアップが。

「……ッ!?!?!?」

まどろんでた意識が秒で覚醒した。は、え!?なに!?何でドアップ!?
びっくりし過ぎて声が出なかったけど、これはまじで褒められて良いと思う。こんな至近距離で大声出したらぜってぇキレてるこいつ。っていうか何で横で寝てんだよ此処リビングだぞせめてソファで寝るかすりゃ良いのになんで、なんでそこ。
ばくばくと心臓が落ち着かない、しぬ。

「う、ぁ…びびった……」

小さく呟いて、一旦目を閉じて深呼吸しよう、そうしよう。ゆっくり息を吸って吐くのを繰り返してたら、くしゃっと頭を撫でられた。

「やっと起きたんかアホ」
「え゛、ば、ばくごう……ごめん俺寝てた……」

それも一瞬の事で、サッと起き上がった爆豪はテーブルの上に置いてあった携帯を手に取って、わしわしと自分の頭を掻いてる。寝起きの爆豪さんは眉間の皺が無くてストレートイケメンですね……。

「はぁ……てめぇ今何時だと思う」

寝顔とかイケメン顔とか、個性が記憶してるかどうか確認してたら、いつも通りの爆豪に話しかけられて慌てて起き上がった。レアもんだ後で描こうって決意はひとまず置いておく。

「え、ええと、何時だ……?」
「10時」
「……22時?」
「10時だボケ。日付変わっとるわ」
「まっじかよ……!!!」

どうやら完全に爆睡だったらしい。おいいいい起こせよおおお!





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