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体育祭、皆カッコ良かったし、なりたいヒーロー像とかもしっかりありそうだよな、なんて。

「爆豪、すげかったもんなぁ……」

しみじみ思い返す。轟もド派手で凄かったけど、それ以上にあの時のあいつはめちゃくちゃ活き活きしてたし、何よりすっげぇ楽しそうでキラキラしてた。
最後は辛そうだったから、そこだけ、俺も見てて辛くなってしまったけど。

「だなぁ」
「……んだよ切島」

ちょっと笑いを含んだ様な相槌が気になって切島を見ればニヤニヤしてた。……あ゛?
しらーっとした目で見れば、別にー?ってにやけながら返されて、余計腹立つ。こいつこんなだったっけ……。

「絵藤が分かってない事俺が言わねぇよ」
「はぁぁ?」

ますます意味が分からん。俺が分かってないって何がだよ。切島が妙に嬉しそうにしてるのがまじで謎過ぎる。

「……きめぇ」
「お前最近爆豪に似てきたぞ……」

悪態をついたら真剣な顔でそう言われたから一発殴っておいた。別に!似てねぇ!





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最近皆意味分からん事言い過ぎだろ。俺がアホだから理解出来ないだけか?
切島と途中で別れた後、職員室で先生に相談して体験先は適当に決めた。
親んとこに行かねぇって言ったら残念そうにしてたけど、あれは多分事務所とのパイプを太くしたかったって大人の打算だろうな。そういうのはうちの事務所に利かねぇだろうけど。
それは別に良いとして、昨日の爆豪と言いさっきの切島と言い、思わせぶりな態度多くねぇ?思わせぶりって言ったら語弊あるかもしれないけど、なんかそんな感じするっつーか……。
大体二人で居る時だから他人に確認も取れねぇし、謎が深まるばっかりだ。
つっても、確認しようがねぇのを考え続けててもしょうがねぇ訳で……、はぁ、一旦忘れるか……。

「……なんだてめぇ変な顔してんな」

考え事をしながらずんずん歩いてたら、無意識に校舎裏に来てたらしい。ベンチにふんぞり返ってる爆豪に暴言を吐かれた。

「変じゃねぇ」
「変だろうが、とりあえず此処座れや、言え」

顎でしゃくって爆豪の隣を差されてムッとしたけど、怒る気も湧かなくて大人しく座る。
したら今度は爆豪が変な顔になった。

「…………まじでどうした」
「はぁ?何がだよ、別に何もねぇんだけど」

さっき一旦忘れようとした事をまた思い出して、無性にイライラしてベンチの上で胡坐を掻く。眉間に皺が寄ってる気がしないでもないけど、取り繕うのも違う気がしてそのままで居る事にした。
何もねぇって顔じゃねぇだろ、って更に詰められる。原因はお前だって気持ちを込めて睨んだけど、ぺしっと軽く頭を叩かれた。

「睨むなあほ」
「いてぇし、もうまじ、全部てめぇのせいだ」
「あ?意味分かんねぇよもっぺん殴んぞ」

半分本気で半分冗談。こいつの考えてる事も、自分の気持ちも迷子過ぎて気持ちわりぃ。

「はーああー、おえかきしたーい」
「あっ!?おい!」

子供みたいに茶化しながら、無防備にふんぞり返ってる爆豪の膝の上に仰向けに倒れこむ。お手上げバンザイ、もうヤケクソだ。
こんなんしたら爆破されるかと思ったけど、わっと中途半端な位置まで手を上げた状態で固まられた。
どうしたんだろうと思って見れば、若干耳が赤くなってる様に見えて、これは、もしや。

「爆豪くん、俺膝枕して照れてんの?」
「ッ!?あ゛ぁ!?!?」

にやぁっとしながら言ったら、上げたままだった両掌がボンボン爆発した。めっちゃキレてるじゃん!ウケる!

「っせぇぞクソ野郎ぶっころすぞてめぇ!!」
「やだやだ死にたくないって」
「つうかその目やめろや!!」

うひひ、って笑う度にボンボン爆発するのがスイッチかなんかみたいでまた面白い。さっき赤かった耳はもう通常に戻ってて、ちょっと残念だ。
舌打ちした爆豪がバッと俺の目を手で隠してきて、やべぇ爆破される!って思って暴れかけたけど、小さく呟いた爆豪の声に驚いて動きを止めた。

「てめぇはそうやって笑ってりゃ良いんだよ」
「ぇ……」
「しおらしくしてんな、似合わねぇからよ」

なん、だよ。急に優しいのとか勘弁してくれよ……。
目の上に置いてた手を滑らせて、そのまま頭をわしゃわしゃと撫でられる。フッと笑った爆豪が開けた視界に居て、いつもみたいなしかめっ面じゃなくて、何だかキラキラして見える気がして、ぶわわ!って顔が熱くなった。

「……んだよ……そういうの辞めろまじ……!」

恥ずかしさに心拍数が上がって、何故かちょっとだけ泣きたくなった。ぶっさいくな顔になってそうだけど、もうそれどころじゃない。
相変わらず頭はずっと撫でられてるし、ストレートイケメンだし、俺をどうしたいんだこいつ。殺す気かもしれない。

「ハッ、そういう顔も悪くねぇな」
「はぁ!?」

いつもみたいな悪人面でにやっと笑うから、バシッと撫でてる手を叩いてやった。
うん、そっちのが爆豪らしい。心臓に悪いんだ、イケメンってのはよ。

「ってぇなおい!!」
「うっせ!うっせ!爆豪が悪い!」

勢いよく起き上がってから慌てて腕で顔を隠すけど、まぁ遅いだろうなとは思う。でもまだ顔が熱いから、大丈夫。多分。






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