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教室に着いたら担任が居た。まぁそりゃそうなんだけどな授業あるし。

「用意したらグラウンド向かうよー」
「はーい」

俺に気付いた先生の声にテキトーに返事して、スケブとか鉛筆とか色々を鞄に突っ込む。
佐野がなんか不思議そうな顔してこっち見てたから、許可おりた!って言ったら納得してくれたらしい。ありがとう佐野の理解力。

「がんばれよー」
「や、佐野も実習じゃん」
「そうだけどな」

佐野と軽口を叩き合いながら、スケブ用のでっかい鞄を肩に掛ける。先生はドアのとこで待っててくれてて、すみません、と声を掛けて一緒にグラウンドに向かう。

「今日は生徒同士で個性使用可の模擬戦らしいから、ほんとに気を付けるんだよ」
「模擬戦!?」

思わずテンションが上がる。やべーやべー絶対すげぇじゃん!

「気を、付けるんだよ?」
「あっはい」

即座に念を押されたから大人しく返事を返しとく。優しい先生だけど、怒ると割と怖いんだよこの人。
それでも模擬戦と聞いてそわそわする。同じ1年らしいけど、んな戦えない俺からしたら皆絶対すげぇし。


そうこうしてるうちにグラウンドに到着。
端の方に居るのがそうなんだろうか。緊張すんな。

「相澤先生」
「あぁ、来たか」

うちの担任とは全然違う、なんか、すげぇ先生が居た。ヒーロー科すげぇ。

「今日はすみません。うちの生徒、宜しくお願いしますね」
「いや、お前も大変だな。気にするな」

先生同士色々あるんかな、とか思いながらぼけっと会話を聞いていたら、相澤先生…だっけ、が俺を見た。

「絵藤だったな、熱心なのは良いが危ないから気を付けろよ。」

10mは離れとけ、なんて言ってヒーロー科の生徒の方に歩いていってしまった。や、俺どうすれば良いんだ。
あーどっか、なんか描きやすそうなとこ探すか…?

「絵藤くん」
「おぁ、はい」
「僕は戻るから、相澤先生の指示をちゃんと聞いてね。ほら、向こう呼んでるよ」
「えー」

まさか呼ばれてるとは。まじかと思いながら振り返ったらほんとに呼ばれてた。
担任に軽く挨拶をしてから相澤先生の所に走る。

「来たな。んでこいつ、サポート科1年の絵藤だ。今日はお前らを描くらしいが、気にせず集中してやれよ」

いや、無理だろ。

ざっくり俺の説明をした相澤先生だが、俺と同じ事を思っただろう1年A組の皆さまが目を見開いて俺を見ていた。ちょっといたたまれないからやめて欲しい。

「俺らを描くってなに!?」

金パの子が叫んだ。なんかチャラそうだな…って思ったけどこいつ、あれ。

「上鳴じゃん」
「そうだよ!俺ら描くの絵藤!まじで!」

なんか知らんけど上鳴が居た。中学一緒だったのに雄英来てたの知らなかったな!ははは。後で謝っとこう。

「サポート科の実習だそうだ、気にすんな」

だから無理だと思う。

模擬戦の組み合わせ決めるぞーって言いながらなんか紙を見始めた相澤先生は、もうその話題を続ける気はないらしい。なんか物凄い色々言いたげなヒーロー科の視線を浴びてる俺。つらい。
上鳴全然助けてくれねぇしなー、頼りねぇなヒーロー。

「あー、うん、ほんとまじで気にしないでいいから、デッサンするだけだし」

何も言わないのもあれかなと思って弁解するけど
なんか意味なさそうな気がする。

「まっじか、それなんか緊張するな!」

カッコよく描けよ!って良い笑顔で赤い髪の男子が言ってくれた。なんだこいつ良い奴な。

ボサッとしてんな始めるぞ、って相澤先生の言葉にグラウンドの中央へ歩いてくヒーロー(仮)。
10mは離れろって言われたけどそれどんだけだよ。
距離感分からないから、とりあえずテキトーにグラウンドの端の土手に腰を下ろして準備をする。

さてー、やるかー。





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