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結論から言えば、爆豪も来てくれた。
切島に聞いたら案外あっさり了承してくれたらしくて、拍子抜けしたとか言ってた。折角連れてこられたのになんつー事言うんじゃ。
ガコン、と自販機でオレンジジュースを買う。これは切島の奢りで俺の分。

「爆豪、さっきのお礼するからどれ飲みたいか言ってー」
「あ?いらねぇよ自分で買うわ」
「俺の気が済まないから受け取ってそして選んで」

ここで引いたら呼んだ意味ねぇし、無言で譲りませんオーラ出しまくったら舌打ちされた。まぁジュースはちゃんと選んでくれたから良しとしよう。

「はい、さっき助けてくれてあんがとね」

想像通りの炭酸ジュース。なんか爆豪っぽいなーなんて思いながら手渡すと仏頂面で貰われた。

「別に、てめぇが邪魔だっただけだ勘違いすんな」
「はぁー??んだその言い方素直に受け取れよお礼してんだから」

こんの天邪鬼さんめ。さっき怪我心配してくれた癖に!

爆豪いつもこんなだからって横で苦笑してる切島に諭される俺。良いけどねとりあえずお礼はしたから。
オレンジジュースうめぇなーって思いながら、ふと思い出す。

「そいやぁ切島、さっき相澤先生に呼ばれてなかったっけ?」
「あ゛っ!!忘れてたやっべ!!」

慌ててジュースを一気飲みして、空き缶をゴミ箱に投げる。ナイスシュート切島。

「わり先行くわ!またな絵藤!」
「おーがんばれー、またな」

ひらひらと手を振って見送る。あれは説教食らうんじゃないかなーと思ったから心の中で合掌しといた。怪我は無かったとは言え俺危なかったしな。

爆豪もそろそろ帰んのかな。
まだ少し中身の残ってる缶に口を付けながらじーっと見てたら、バチッと目が合ってしまって、ちょっと慌てる。

「んだよ」
「いや?爆豪の個性すげぇよなって思い出してたとこ」
「はっ、お前が地味過ぎんだろ。目の色変わるだけかよ」

パッと見そうなんだろうけど、そう言われると俺のなけなしのプライドが傷つくってなもんで。

「ちげぇわ、これでも瞬間記憶ってヤツなんだよ。半年くらいは記憶の引き出し自在だわ」

馬鹿にすんなし。

「どっちにしろ地味な事に変わりはねぇじゃねえか雑魚が」

凶悪そうな顔で笑われてカッチーンときた。おま、誰が雑魚だこの野郎!

「はぁ?雑魚言うんじゃねぇよ!そりゃお前からしたらそうかもしんねぇけど!この個性のおかげで俺の画力うなぎ登りだわ!」
「あ゛!?そこまで言うならてめぇのそれ見せてみろや!ご立派な画力とやら確かめてやるよ!」

顎でしゃくって俺のスケブを指してくる爆豪。こうなってしまえば売り言葉に買い言葉だ。

「超ご立派だわ泣いて感動しろよ爆豪!」
「誰が泣くかあほかよてめぇこそびびってんじゃねぇのか!」

くっそなんだこいつまじ腹立つな!肩に掛けた鞄からスケブを取り出そうとした時、スパァン!と誰かに思いっきり頭を叩かれた。

「「ってぇ!!!?」」
「こんなとこで喧嘩してないでさっさと帰れアホども。迷惑だ」

どうやら爆豪と同時に叩かれたらしい。爆豪はともかく、俺は加減して叩いてくれよ相澤先生……。頭腫れてんじゃねぇの……。
頭を擦りながらすんません、と謝る俺と、舌打ちするだけの爆豪。なんか毒気が抜けた。
俺らが落ち着いたのが見て取れたのか、相澤先生は自販機でお茶を買って早々に居なくなってた。
どうでもいいけど、切島呼ばれてなかったっけか……。

「はぁ…帰るか」
「明日、」
「え?」
「昼休みそれ見せに来い」

俺を睨み付けながらそう言って、返事を待たずに爆豪は帰ってしまった。いや、えー、拒否権無しな感じ?
明日、か。それまでに微塵も文句つけられないくらいのもん描いとかなきゃならんな。
溜息を吐いてからぐっと気合を入れる。ダッシュで帰って描かねば!



家までの帰り道、急ぎめに歩きながら今日を降り返る。
めちゃくちゃ腹は立ったけど、あの時助けてくれた爆豪はかっこよかった。無意識だったけど、俺の個性がちゃんと記憶してくれてるくらいには。

あれしっかりばっちり描いてあいつの度肝抜いてやる。勿論フルカラーで。





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