30歳大人シュウとデート後半〜スイートルーム〜


バーでお酒を飲んで、ほどよく火照った体を
明確な欲を持つ手でなぞられながら部屋へ向かうのがもどかしい。
互いに高まった熱が服越しにしか感じられないのが切ない。

恨みがましくシュウを見上げれば、ほんの少しまなじりを赤く染めて
それでも余裕の残る瞳とかちあった。

「そんな風に睨んでくるくらいならさっさと歩けば?
それとも、自分だけじゃなく俺まで焦らすつもり」

ようやくドアの前までたどり着くとシュウが不遜に囁く。

「俺の胸ポケット。カードキー、出しなよ
あいにく両手塞がってるからあんたが開けて」

「・・・っひどい、のね・・・」

塞がっている、という彼の手は片手は私の腰に、
そして利き手の左手は、背中のファスナーにかかっている。
カードキーを取り出そうとする私の手は、はたから見たら
男の胸に手を這わせる娼婦のように見えるのではないか。

「酷い?それはあんたもだろ」

ピ、と電子音が鳴ると同時に開いたドアの隙間から二人、もつれこんだ。
カチリとオートロックがかかるのと、私の手がシュウにまきついて
深く唇を合わせたのは、どちらが先だっただろう。

「ん・・・っん、ん・・!ふ・・・ぁ・・っ」

ほのかに香るアルコール。熱い舌を絡ませ合う音が広いスイートルームに響いて
夢中でシュウの唾液を飲み込む。
キスをしながら背中のファスナーを下ろされて、つつ、と爪先で撫でおろされた。

「〜〜〜・・っあ」

すがるように掴んだネクタイを震える指先でほどいて
シャツのボタンに摘んだころには、シュウは私の上半身を露わにして
首筋から耳にかけてを何度も舌で往復しながらいいかげん窮屈な下着のホックを
器用に外していた。

「はっ、なにやってんの・・・早く脱がせろよ、ん・・・」

らしくないくらい上擦った声で囁いてくるから余計に手が震えて
脱がせられないってきっとわかって言ってる。

「だ・・ってボタンとか・・・上手くはずせな・・やぁ・・っ」

する、とアップにしていた髪を解いてすく動きにぞわりと
感じて首をすくめた。

「世話のやける女。・・・じゃあ、先こっち」

シャツを握り締める私の手をとって、ベルトに触れさせた。

「口でする?俺は、どっちでもかまわないけど」

意地悪そうな笑い声と一緒に落ちてきた言葉に、もうこれ以上
熱くなれないと思っていたからだがさらに熱を帯びる。

「手、で外すから・・・キス、して」

「くく、強請るの、上手くなったな」

金具を外して前を寛げる間、シュウは短く触れるだけのキスを
何度もくれた。
腰まで落ちていたワンピースをシュウの手が下ろして
子供の着替えみたいに足を持ち上げられ引き抜く。
そのまま体重をかけられて、ぐらりと背中から後ろへ傾いた。

「・・っきゃ・・あっ」

床に倒れ込む、と思って悲鳴が出た。
でも、私の背中を受け止めたのは柔らかいスプリングのきいたベッドで。

「ふ、少しずつ移動してることにも気付かないくらい夢中だったわけ?
本気で驚いて・・・鼓動が激しくなった・・・・興奮した?」

驚きで目をぱちぱちさせる私の上に乗り上げて、シュウが顔を近づけてくる。

「さっきまでの色気まで飛んだなあんた・・・
ほら、可愛がってやるから・・・溺れなよ」

ちゅく、と下唇を吸うキスに目を閉じる。
シュウの長い指が腰を撫でおろして唯一身につけていた
下着の中へ滑り込んできた。
バーを出たときからずっと焦らされて疼く中心を掠めて
割れ目を擦られる。

「んぁ・・っあ、あ・・っ」

今ならどこを触られても達してしまうかもしれないと思うくらい
過敏になっているのが自分でもわかる。
シュウはそんなこと百も承知で、感じるところばかり愛してくるから
優しいのか酷いのかわからなくなる。

「なぁ・・・もう奥に欲しい?」

突き入れた指で浅い部分を擦りながらそんなことを訊かれたら頷くしかない。

「欲し・・・欲しいから・・・っお願・・・シュ・・」

自分の瞳いっぱいシュウだけ映して恥もなく強請る。
デートの始めからずっと散々焦らされてとっくに限界を超えてしまった
私の体は、一度シュウにおさめてもらわないと溶けて崩れてしまう。

「やらしい女・・・でもそういうあんた、すごく、いい・・・
ずっと俺だけ・・・求めてろ」

体の中心に熱を感じると同時に一気に奥まで貫かれた。
最初から子宮を押し上げるように突き上げる激しさを感じて
シュウの余裕が瓦解したと思うと嬉しい。

「あぅ・・・っあっ!あ・・っあ〜〜・・っん、ん・・!」

最奥に当たるたびに背骨を快感がかけあがっていく。
もっともっと感じたい正直な体が反って、シュウに深く絡みつく。

「や、今、だ・・・めっ、ぁん・・・っ」

絶頂を感じて波が引く間もなくかき回されて涙がにじむ。

「勝手にイったの・・・?俺を置いてくなんて、な・・・」

苦笑とともに耳に流し込まれる掠れたシュウの声も
二度目の絶頂への導火線で、私の体がまたうねる。

「・・・・く」

シュウが短く息をつめた瞬間、胎内にじわりと熱が広がるのを感じた。

「・・・んん・・・ぁ、い、い・・シュウ・・・・っ」

未婚の女としてはあるまじきことだけれど、その時の私は
シュウに満たされた喜びしか頭になくて、中に注がれる欲望の意味まで考えられない。

「・・・あんたをずっと俺のそばに置いとくためなら・・・
ガキくらい、どうってことない・・・あんたは溺れてればいいんだ、俺に・・・」

シュウにこんな風に囁かれたら、なにもかも許してしまう。
ぬるりと繋がりが解けて、その喪失感に小さくため息を零す。
私の隣に身を横たえたシュウはそんな私を見て口端をあげた。

「・・あんた、わかりやすすぎ。
まだ離れたくないって顔に書いてある」

指先で私の唇をゆっくりなぞって

「今夜は一晩中可愛がってやるから・・・あんたも少し
協力しなよ。・・・ほら」

ちゅぷ、と人差し指を口の中に差し入れて舌と口内の粘膜をかき回す。
シュウの指が私の唾液でしとどに濡れた。

「う・・ん・・・む・・」

奥歯をなぞって上あごをくすぐって、私の口端から唾液が
滴り落ちるのもかまわず、ひとしきり指で遊んでから
引き抜く。
その指をシュウが付け根から暗示するように舌で舐めあげた。

「今度は口の中、汚してやるよ
指なんかじゃ物足りない、だろ・・・?」


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