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深夜、変な女を拾った。
纏もちゃんとなってないくせに俺の店の前で血だらけで倒れていた。こりゃ瀕死状態だ、と思ったがわずかに息をしていたのを見て感心した。

(まだ生きたいと願ってんのか)

生存力が高いのかなんなのか、とにかく生きたがっているように見えた女をとりあえず俺の部屋に入れた。
傷をいやすためにブラウスとスカートを脱がせて下着姿にする。
自身の念能力で傷を治し、包帯を腹に巻き付けた。
たかがガキの身体だ、別になんの欲もわいてこねー。
意外に胸はあったが。

傷の状態を見る限り、起きるのは2日くらいかかるだろう。俺はそのまま下にある店にさがり、仕事の書類などを整理していた。




午後1時くらい。
夜から何も食べずにいた事を思い出し、上にあがった。
次いでに女の様態を確認しようと思って部屋を覗いたところ、その女は上半身を起こし、ぼーっとしていた。

(起きたか... 意外にたふなやつだな)

ヨルと名乗った女と話しをして分かったことは、こいつと俺の会話がかみ合っていない事。
ニホンゴって言った時はなにいってんだ、と思った。
色んな国の言語なら俺は誰にも負けないと自負しているのだから。

ニホンゴなんて言語は聞いた事もないし、そんな単語自体も聞いた事ない。
頭をぶったか、と思ったがそうでもないらしい。そいつは至って冷静だった。
冷静に、今の状況を整理しているようだ。

「多分、ここ。私が生きていた世界じゃないようです」

考えぬいた挙げ句に、その結論に至ったヨルに俺は口をあんぐりと開けた。世界?言う事に欠いて世界が違うときたか。
だが、こいつの目は本気だ。

信じられないわけじゃない。
ニホンゴなんて言葉はこの俺でもしらないし、ハンター語と言った時に目をぱちくりしたという事は、こいつはハンター語ではなく、そのニホンゴで生きていた。でも、こいつは今ハンター語で話している。

そして、極めつけは、念無しで俺の店の前で倒れていたこと。

(その答えが一番か...)

世界を移動させる念なんて聞いた事はないが、念を盗んだり、人間を操ったりしてるヤツ知ってるし。
念はなんでもできる。まぁその分ハイリスクハイリターンだけど。
多分、こいつをこの世界に送ったやつは死んでいるか、かなりの重傷に陥ってるだろう。
何を思ってこいつをこの世界に送ったのかは分からないが。

「で?お前、それが分かったところでどうすんの。ここがお前の世界じゃないなら、裸で森にいるようなもんだぜ?」
「はい、そうでしょうね。なので、エールさん、ここに住まわせてください」

意外にこいつ図太い神経してやがる。堂々とそう言い放ったヨルに、俺は面食らった。

「ただで、とは言いません。エールさんのお店?で、働かせてもらえませんか」

働きながら、元の世界に戻る方法を探します。


図太い、とかそんなんじゃない。自分の欲に忠実だ。
でも、そんなんじゃないとこの世界やっていけないことは確かだ。

元の世界に戻りたいってんならなおさらだ。
本気だということが伝わる。俺も覚悟を決めて、口を開いた。

「…わかった。改めて言う、俺はエール。ここ、情報屋の店主だ」
「情報屋?」
「あぁ、あとで見せてやる。よろしくな、ヨル」

別にまだ気を許したわけじゃない。
だが、纏もつかえやいただのガキに警戒心を持つ方がおかしいだろう。それに、俺はそんな簡単には死なない。例えこれが全て演技だったとして、そいつに何のメリットがある?

とりあえず、いくらかは下であろうヨルの頭をなでてやった。

これから共に過ごすことになるのであれば、まずは仲良くなることが最優先だろう。


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