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ヨルがここにきて数年程経った。
あいつは物覚えが良い。とても役に立つ。
最初にあった「異世界から来た詐欺」の疑心はなくなり、今では妹の様に扱っている。
そして、あいつは結構賢い。
最初にあいつに教えたのはハンター語だ。
なぜだか知らないが普通に話す事はできるのに、書く事ができないヨル。
ハンター語を教えると、私の元いた世界の方が難しかった、といってものの三日でマスターしやがった。
そして、俺の仕事にとても効率よく貢献してくれる。
あの大量の本をジャンルごとにわけてくれるようになってから、とてもスピーディ且つ的確に仕事が進むようになった。
今ではおそらく、俺よりもあいつのほうがここの本を理解しているだろう。仕事の合間を縫っては元の世界に帰る方法を見つけているし。その欲に忠実な所が、俺は気に入っている。
あいつの部屋にある本棚には、大量のファイリングされた資料が並んでいる。ここにある本や俺のパソコンを使って、色々な資料をまとめているらしい。
そのときのこいつを見たとき、俺は思わず口元に笑みを浮かべてしまった。
まだ完璧とは言えないが、凝をしていた。
おそらく本人は無自覚だろう、纏も全くできていない。
だが、本を読み、ファイリングをしている時のあいつは、無自覚に念を使っていた。
これほどまで楽しいことはない。
俺はもうそろそろしたら、こいつに本格的に念を教えようと思うようになっていたのだ。
コーヒーをすすりながらヨルの横に積み上げられた大量の本を見つめ、俺はつい笑ってしまう。
「..エールさん?」
「いや、なんでもない」
それより、
口を開いて何かを言いかけた時、店のドアのベルが鳴った。
「客だ。その本は任せたぞ」
「はい」
本当に数年ぶりに感じるなつかしいオーラに、俺はまた違う笑みを浮かべた。
「いらっしゃーい」
間延びした声をドアに投げ掛ければ、そばにいたのは黒髪の青年、金髪の青年、胸元を開けた女性につり目の女性。
外にはがらの悪い男性や図体のでかい男性のオーラも感じる。本当に懐かしい客だ。
俺は片手をあげ、挨拶をした。
「よう、クロロ」
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