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「やぁ、エール。久しぶりだな」
「そうだな。元気だったか?」
「まぁな。そっちはどうだ?」
「俺は元気さ」
「あぁ、本当だ。新しい店員でも雇ったみたいだな」

そうクロロが言うと、全員奥の方へと視線を尖らせる。流石は旅団。人の気配には敏感なこって。

「まぁ、エールが側に置いてるってことは安全なんでしょ?」

金髪の男、シャルがそう言う。
この爽やか笑顔も久しぶりに会うな。ちょっと会わないうちにうさんくささが倍増していた。

「あぁ、すげーつかえるヤツだ」
「ほぉ..?」

「ま、やんねーけど。で、今日はなんの情報が知りたい?」

カウンターの席にクロロとシャルを座らせる。パクとマチにも勧めたが、二人はクロロのそばで立っている、と言った。

本当に頭には忠実に従うやつらだな。

「今回は、イリネ地方の伝説の話しの情報をもらいに」
「...イリネ地方?」
「あぁ。シャル」

クロロが隣に座ってるシャルにそう言えば、シャルは携帯の画面を俺に見せながら説明をした。

「あいよー。イリネ地方の伝説あるじゃん?ある日突然現れた別世界からきた少女の話し。その少女が護った別世界への入り口とされてる鏡。俺ら、次はそれを狙ってんだよね」

こいつらは幻影旅団。別名は蜘蛛。正真正銘、盗賊軍団だ。全員A級首犯罪者だし。
なんでこいつらと俺がこんな良好な関係なのか、というと、俺も流星街でこいつらと共に生きていたからだ。

「なるほどな、だったらあいつのほうが適任だ」
「あいつ?」
「新しい店員かい?」

マチがそう聞く。
俺はその言葉に頷き、奥にいるだろうヨルに向かって大きい声で叫んだ。

「ヨルー!!イリネ地方の本と資料もってきてくれ!!」
「はーい!!」

階段をかけのぼる音が聞こえ、そのまま俺はパソコンに手をのばす。
あいつが調べたところから跡を追跡していき、とりあえず色んな資料が載っているサイトを多数のパソコンで浮かばせる。

「で、イリネ地方の何を知りてーの?」
「全部だ」
「報酬は?」
「2億ジェニー」
「..いいぜ、受けてやる」

クロロの言葉に、俺は念を発動させた。

「相変わらずえげつない商法だね、あんたは」
「2億ジェニーってぼったくりじゃないー?」
「それでも、エールの腕は確かってことよ」
「そういうことさ」

クロロ達の会話に耳を傾け、俺は右手をパソコンの中に突っ込む。
おそらくイリネ地方の伝説の詳しい事はあいつが全て知っているだろう。俺はそこには載っていない、侵入経路、警備体制、その地図を見ればいいわけだ。

"奥にある真実(マイインフォメーション)"

どんなに立ち入り禁止区域であるサイトでも、俺はこの念能力で無理矢理情報を見る事ができる。
そりゃ、情報屋向いてるよな。

「あったあった」

見つけた情報をするするとひっぱりだし、俺専用のパソコンにそのサイトを移す。
丁度上からおりて来たヨルは大量の資料と本を両手に抱え込んでいて、危なっかしい姿だった。

「おーヨル、お前大丈夫か?」
「ちょ、あの、やばい、かも...!!!」

あと一歩でおりれるって時にあいつは足を踏み外した。
勢い良く倒れ込みそうになるヨルを、シャルが間一髪で抱え込むように支える。
本と資料も全てシャルの手の上。良い感じに積み重なって絶妙なバランスを保っていた。

「大丈夫?」
「あ、はい、すみません、お客さんにこんな事..」
「俺は大丈夫だけどね」

そう爽やかにいったシャルから離れて、丁寧にお辞儀をするヨル。なんだかんだいってこいつも、うさんくささで言うなら結構なレベルのもんだ。

「ヨルー初仕事だぞ、お前の」
「え?」

シャルから渡してもらった大量の資料と本をカウンターの机に置き肩をならすヨルにそう言う。
俺の情報はもう全てコピーし終え、プリンターからは紙が大量に溢れ出ていた。



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