キミがキミでなくなった日


告げられた言葉を理解できていたのか分からない、しかし彼の表情を見て頷くしかないのだと脳が告げた。何度も訪れた部屋の中は真っ新だ、家具はあれども彼の私物は全てなくなっている。生活していた痕跡が一切ない室内を見渡すと、怪訝そうに視線を送られてしまう。
「じゃあ」と冷たく言い放たれて、思わず腕を掴んでしまったが。彼は煩わしそうにわたしの手を振り払って、ドアから去っていった。


「いらっしゃいませ」

降谷零が消えたあの日、わたしの家は全焼し家族は誰一人として助からなかった。唯一生き残ったわたしに疑いが掛かるのは分かっていたけれど、取り調べは想像以上のもので




「すみません」
「はい、只今伺います」


「お待たせ致しました。ご注文をどうぞ」


安室と呼ばれる人物を見ると



「ねぇねぇ、お姉さん」
「ん?なーに?」
「その指輪すっごい綺麗だね!」
「え?」



「ああ、これは指輪じゃないんだ」
「え...でも」
「鎖なの」
「へ?」
「忘れないように。縛り付けておくわたしの鎖」



「お姉さん...?」
「」










secret