沈夜鎮魂丸!!!
今日は非番の日だった。
三番隊はみんなそのようで、暇潰しに斉藤の部屋に行ったが誰もいなかった。
外に出かけるために振袖を着る。
藍色の着物に下から黒のグラデーションがかかった振袖に手を通す。
大判柄の牡丹の花が美しいものだ。
帯は大人っぽく銀と裏に黒のものを捻って締めた。
芥子色の羽織を羽織って、手入れをした沈夜鎮魂丸を背中に背負った。
髪はいつも通り二つに結った。頭には反り立つ毛があるが気にしないことにした。
銀の草履に足を通し、キラキラと控えめに艷めく。
かぶき町をブラブラと歩いていたが特にすることがなく、旧友の店へ顔を出す。
「で、何しに来たんだ犬っころ。」
「犬じゃなく人間なんだけど!!!」
旧友とは幼い頃からお世話になっているお兄さんの銀時の事だ。
「あ!名前アル!どうしたネ!やっぱり就職には失敗したアルか!!」
酢昆布を咥えかわいそうなものを見るように神楽に言われる。
「ふふん!聞いて驚いてください!私ね!何と……!真選組に入れたのでーす!!!!」
ふんぞり返って万事屋達にいう。
またまたァ何て反応が返ってきて皆思い思いのことを言い放つ。
「名前、お前ウソはいけねェよ。」
「そうですよ、わかりやすすぎます。」
「見損なったアル。」
「オイ、そこに並べやァ……。」
いつものコロコロと鈴のような可愛らしくも騒がしい声が消え、地を這うドスの効いた声が部屋を震わせた。
顔も丸々とした黒目は小さくなり鋭く光った。
ジャキッと大太刀を抜刀し、三人の目の前に差し向ける。
新八の「ヒッ!」という声が聞こえたので刀はしまって、警察手帳を出した。
連行してやろうかこいつら。
「それ、まだ使ってるんだな。」
「私の刀だからね。」
落ち着いた名字の顔はいつもの少女のような面影はなく、年相応の女の顔をして刀を背中から下ろした。
ソファーにストンと座る。
「でも、そいつの名前いつ聞いてもダサいアル。」
「そうだ、そうだ。ちんちん丸なんて卑猥な!あ、でもぶりっ子女にはお似合いか?」
「沈夜鎮魂丸!!!勝手に略さないで!あとアンタ達ダメ大人にしかこういう態度してねェし!!」
「あーはいはい、チンや!チンコ丸な。」
「違うもん!!!」
「もんっていい歳した大人が恥ずかしくねェの?」
「テメェやっぱり殺しておくべきか?あ゙あ゙??」
「おぉ!やんのかテメェ?」
「上等だ!表に出やがれ!!!」
ギャーギャーと騒ぐ大人二人を見て、やれやれと子供たちは部屋から出ていった。
「お前、アイツの事どうするつもり?真選組何かに入ったら…。」
「アイツを止めるために入ったんだ、もう、私はアンタ達の妹でもない。」
「そうか。」
でも俺、昔みたいにアホ面して鼻歌歌ってるお前も今みたいにツンツンしてるお前も嫌いじゃないよ。
少し昔を思って寂しそうな横顔の銀時に、いつも敵わないなァと思った。
だから聞こえないように小さく小さく空気をふるわせた。
「ごめんね兄さん。」
「……。俺達の妹なんだからよ、もっと甘えてこい。」
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