隊長だけでアフロ分は足りてますよ!!!
「三番隊副官!名字名前!推して参る!!!」
ペコリと一礼をして竹刀を構える。
「女子が相手か、だが容赦はせぬぞ。」
相手を見やると面を脱ぎ、汗を拭くもじゃもじゃアフロがいた。
「え!アフロ?!!隊長だけでアフロ分は足りてますよ!!!」
不満を零しつつ相手を物見の間から睨む。
「お主も隊士なのか。」
「そうですけど…。」
「ハァーハッハッ!!」
黒いもじゃもじゃの下の毛玉のようなアフロは豪快に笑った。
「この柱にこのような相手を差し向けるとは!入隊してくれと言っているのか?!」
面を被りながらアフロは言って除けた。その言葉に苛立つ。唯でさえ斉藤と見た目がキャラ被りしそうなのだ、この激昴を抑えているだけでありがたいと思って欲しい。いや、斉藤のほうがとてつもなく見た目は男前だが。
しかしながら、先程の打ち合いを見ると斉藤の言った通り相当の腕があるようだ、自信過剰でもおかしくはない。
「チッ!……始めてくださいませんか。」
一つ舌打ちをすると審判の隊士が我にかえった。
「は、始めェ!!!」
開始度同時に踏み込み柱へ打ち込む。スパァアンと響き渡る竹刀と竹刀のぶつかり合う音。そこから衝撃波をうみ、道場内に突風を起こした。手が痺れる、すごい力。まるで、師匠みたい。
こちらも負けじと打ち込む。何とか攻められてはいるが、柱の突きの勢いは冗談じゃないほど鋭い。しかし、薙ぎ払う力は自分の方が上。ならば相手から竹刀を落とした方が勝算がある。
「名字は一撃じゃなかったなァ。」
「当然だ、副官だぞアイツは。」
近藤と土方が興味深そうに見入る。
その言葉を聞いた隊士達は沸き立った。
「名字強ェエエ!!!」
「さすがは斉藤隊長相手に一時間粘っただけはある!」
「頑張れ!名字!!」
名字!名字!と自分を奮い立たせる声援が聞こえる。柱の猛攻は止むことはない。名字の動きが分かっているかのように、竹刀を振るっていた。
時計の長針は半周を過ぎようとしていた。
竹刀を握る手が剣山を握っているかのように、傷んだ。名字はもう防戦一方だった。
獸の様に柱の竹刀に噛み付いて行く。
柱は大振りに面に当てに来たが、名字に振り払われる。
「ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
雄叫びをあげる名字は、振り切った柱の手を目掛け竹刀を振り落とした。
パァアアン。
パシリと乾いた音と共に落ちた竹刀。
「一本!!!」
名字の手には何も握られていなかった。
柱は振り落とされる勢いを利用し、右斬上で名字の手から弾き飛ばしたのだ。
「ヤケになっていては、この様に打たれる隙を見せることになるぞ名前。」
柱が近づいて名字に耳打ちをした。
ハッとし柱を見やる、もしかしてコイツ。
「ス…スゲェ…。」
「何者だあの新人。」
「こ…これで三十人抜きだぜ。」
「あれだけ腕が立ちゃあ即戦力、隊長達にも全く引けをとらねェぜ。」
ざわりざわりと隊士達は口々に言い合った。
名字は面と甲手を取り端へ行った。
「あの名字ですらやられたか。」
近藤は手から血を流す名字を瞥見した。
「途中から防戦一方だったし。まァ、あれだけ長く打ち合えたんだ、名字もスゲェよ。」
「それにしても、在野にもまだあんな使い手が残っていたとはな。一体何者だ、トシ。」
「……えーと、どうやら出身は地球じゃねェようだな。」
「え!?浪人じゃないのか。」
「ああ。この名前…何て読むんだ。」
「あふろう?」
「いや、あふろじゃねェか多分…。」
スッと目の前の柱が面を脱いだ。
「アフロじゃない、カツラだ!!」
や、やっぱりィイイ!!!!師匠!!この人ここで何してやがる!!ホント帰って!ここ、真選組だからァ!!!!!!
名字は冷や汗をドバドバと流す。
目の前の柱はやってしまったとばかりの顔をしていた。
「アフロじゃないカツラだ?なんか…どこかできいた事あるフレーズだな…。」
ホラ!もう疑われてるよ!!!土方さん、そのまま正体突き詰めてください!!!
名字は疲れ切った身体で何が何だか分からないと混乱して頭を抱えた。
腕をスッと取られる。目の前には斉藤が血を流す手見て、眉を八の字にした。
斉藤にそっと傷をなぞられると、名字はビクリと肩を跳ね上がらせ目尻に涙を浮かべた。
名字の手に持つ竹刀を取り、柱の前へ出た。
何?!隊長!!悪い影響受ける前にソイツから離れて!!!!
名字の思いは伝わることなく、斉藤は物々しい雰囲気を放つのだった。
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