沖田隊長詳しく。
「喜びな新人さん。その人に勝ったら、面接抜きで隊に入れてくれるってよ。」
沖田がそう言うと名字は、心の中で焦り始めた。
ちょっと、それはやめておいた方がいい!面接でコイツの素性を明らかにしてェエエ!!!
いくら心の中で叫んでも沖田には届くことは無かった。沖田はもう一本斉藤に竹刀を投げ渡した。
「真選組、三番隊隊長。」
ヒャガァと竹刀を振って斉藤は空を斬り裂いた。
「斉藤終。」
斉藤の瞳は強い怒りを秘めた獣に変わった。名字は足先から痺れるような感覚がした。そんな場合ではないのは理解しているが、獲物を持った時の斉藤のギラギラした瞳がそれほどまでに好きだった。
「アフロの狼、「アフ狼」と恐れられる、終兄さんに。」
何その二つ名!!!可愛い!!!てか、私それ知らない!!!!!
そう沖田が言うや否や、ドッという音ともに斉藤は突っ込んでいった。
柱は一時間の打ち合いの末、近藤が止めに入った。柱が勝ちこそはしなかったが入隊することになってしまった。今、沖田に案内されている所だった。在席表を見て何やら話しているらしい。
「たいしたもんだ、あの終兄さんと互角に闘り合うたァ。勝ちこそしなかったが、実力は最強クラスだ。合格だよ。」
沖田が柱を褒める声が聞こえる。あの沖田が褒めるなんて余程だ。
「終兄さんも、アフロがかぶってる件は水に流すってよう。」
隊長張り合う所が可愛いな!別にアフロが被っていても、隊長は隊長で、唯一無二の存在だっていうのに。
名字はくすくすと盗み聞きを続ける。
「あ、でも名字の手に傷や痣を作ったのは許さねェってさァ。」
「沖田隊長詳しく。」
「うわ、湧いてきたな犬っころ。」
「隊長は私を心配してくださってたのですね!!?」
「あァ、救急箱持ってお前の部屋の前ウロウロしてたでさァ。そこで聞いたんだィ。」
そう言うと沖田は腕を無遠慮に引っ張る。
「大した事ったねェのに、終兄さんもどうしたのかねェ。」
「私!隊長のところへ行ってきます!!!」
「そうしなせェ。」
沖田の言った通り、掌の皮が軽くズリ剥け手首に痣ができた程度だ。もしかしたら、他の用事があるのかもしれないと、斉藤がいるであろう自室へ急いだ。
「隊長ー!!!」
狙い通り自室で書類を書いていた隊長に向かって、スライディングをして抱きついた。
筆はもう離していたようで、そこらが汚れた様子はなかった。
[名字さんお疲れ様でしたZ。怪我は大丈夫ですか?手当しますZ。]
そう書いて見せてくれると、腰に回していた手を取られ手首に生温い湿布を貼られた。
斉藤はこれをずっと持っていたらしい。斉藤の体温の湿布は、痣を優しく撫でられているようで嬉しくなった。
「ありがとうご…。」
「本日付けで三番隊に入隊いたしました、柱阿腐郎です。」
お礼を言おうとすると、開けっ放しにしてあった障子戸の前に立つ柱に被せられた。
その声を聞いて名字はムッとし、斉藤に強く抱きついた。
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