もういいってソレ!!
「よろしくお願いします。斉藤隊長、名字副官。」
ピッシリと敬礼をする柱。
名字は柱を首だけ動かして見て、心底嫌そうに言い放つ。
「よろしくお願い致します。柱 特 別 副 官。」
不機嫌ですと言わんばかりに地を這うような声で返すと、斉藤はピクリと反応した。腰に巻き付く手を上から重ねられる。
ピリピリとした胸の中が、ほっこりと暖まる。ふふと名字が笑うと、手を離してこちらを見た。
斉藤は少しほっとしたような表情だった。
「私、お茶貰ってきますね!」
そう言って立ち上がると斉藤はチラリとノート端を見せた。
[お菓子もお願いしますZ。]
「はぁい!」
そう言って出ていく名字を柱はポカーンとして見ていた。暫くして戻ると柱はまだいた。気にせず中に入る。
「隊長!お茶です!!今日は水まんじゅうだったので冷茶淹れました!!」
ことりと机に置くと、水まんじゅうを名字の方へ寄せた。
「ありがとうございます!!いただきまーす!」
斉藤のお茶を啜る音と、名字の咀嚼音が響く。柱はまだ立っていた。
まるで餌付けだと言わんばかりの顔だ。
おやつを食べると眠たくなってきた名字は、斉藤の脚に頭を乗せて寝た。
斉藤の筆の音の中静かに眠った。
肌寒くなり縮こまっていると、トントンと肩を叩かれ起こされる。
夕餉の時間だ。
眼を擦っていると手を掴まれた。
首を振る斉藤に頷いて返す。きっと目を擦るなと言いたいのだろう。
柱はまだいた。有り得んと言わんばかりの顔をしていた。
気にせずに食堂に向かう。
食べ終わった後も柱はそこにいた。
いい加減こっちがキレそう。
斉藤に挨拶をして今日は上がる。
自室に帰る前に柱の腕を掴み、人気のない場所へ引き摺っていく。
「どういうことだ名前…。まるで斉藤に犬の如く尻尾を振りおって。」
「名字副官だ、口に気を付けろ柱特別副官。と言うより何でここにいる…桂師匠。」
桂は幼い頃名字に剣を教えた師だった。
この人は聞くところによると、攘夷浪士として動いているはず。何故このような敵の巣窟に来るのか、理解したくなかった。
「桂師匠ではない!柱阿腐郎だ!!……久しぶりだな名前。」
「名字副官だ。…ハァ、私アンタと知り合いって思われたくないんだけどなァ。」
朗らかに笑う桂に対して、名字はいつものあどけない笑みを消し、険しい顔で睨み付けていた。
「真選組を、隊長を邪魔するなら…三番隊副官として粛清するぞ。桂小太郎。」
背中の大太刀を抜刀し桂の鼻先に向けた。
「……、ちんちん丸。まだ使っていたのか!」
「沈夜鎮魂丸!!!」
「何と卑猥な剣よ、さすがはアイツがお前にくれてやった刀。」
「もういいってソレ!!てか私の刀なの!コレ!」
そう言うと桂は急にこちらを、しっかり見つめてきた。
「しかし、そういう腹積もりなら、お前が攘夷戦争に加担していたこと…三番隊として言ってもいいんだぞ?」
「最低ね。」
「どちらがだ?」
名字は刀をおさめ、桂を睨む。
大人しくは去ってくれなさそうだ。
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