えっ
目を覚ますと布団の上だった。ガバリと布団をはねのけ起き上がる。
ズキリと節々が傷んだ。
ここはどこだ、私は確か真選組入隊を賭けて…。
「負けたのですか…。」
正直最後のうんこの人との勝負は覚えていないが、あの瞳と素早い攻撃は記憶にあった。
理解が追いついてきて涙がパタパタと落ちた。
今まで負けたことがないわけではないが、悔しかった。
あんなに大口叩いておいて負けてしまうとは情けない。
世界が暗い海に沈んでいく、意識がまた落ちていきそうだ。
「失礼しまーす…ッ?!!」
地味目の人が怠そうに声を掛け、戸を開けた。
こちらを見てひどく驚いた。
なぜかすごく汗をかいている。
「だ、誰かァアアアアア!!!!!!!!」
彼の叫び声で屯所中の隊士が集まった。
「お、起きた!」「3日目でようやく!」「俺死んでるのかと思った」
口々に安心したように隊士はつぶやく。
そんな中、すまんなという声とともに近藤さんが現れた。
部屋の中をのぞくや否や叫んだ。
「や、山崎ィ?!泣かせちゃったの!!!」
ダメじゃんんん、と山崎の肩を揺らす。
揺らされている山崎とかいう人は、必死に弁解してるけど揺らす速度が速すぎて聞こえない。
「休ませていただきありがとうございます。」
名字は先日の戦った時とは違った、鈴のような声を弱々しくはなった。
一同は水をうったように静まり返った。
近藤は山崎から手を離し、名字の横に移動し顔の位置が一緒になるように座った。
とても柔らかで何もかも任せたくなる雰囲気の方だ。
「いいんだよ。じゃあ申し訳ないんだけど…。」
「わかっています、勝負には負けました。ご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした。」
ふらりと力なく立ち上がり、横に置いてあった大太刀の沈夜鎮魂丸(ちんやちんこんまる)を手に取る。
立ち上がると体の痛さからまっすぐに歩むことができなかったが、足早に外に出ようとした。
ガシッ!!足を掴まれ転びそうになり、掴んだ人物を確認するためちらりと視線を向けた。
「待ってェエエ!!!今日から入隊して早速お仕事してもらいたいんだけどォ!!!!!」
お願いいいいっと叫ぶ近藤に気持ち悪さを感じ、蹴りを入れた。
「えっ」
今このゴリラなんて言った?
入隊って。
「いてて…。終相手にすごかったぞ!あれだけできたら女の子でも大丈夫!だと思う。…うん合格だよ!!」
蹴られた箇所をさすりながらにこやかに言った。
「俺は真選組局長、近藤勲!よろしくな名字!!」
「は、はい!!!!」
顔に熱が集まる。涙はまだまだ出るが虹が出てるような感じがした。
雨が上がるのは早そうだ。
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