隊長に剣先を向けるなクソヅラァ!
「隊長、本当に一緒に白州に立たされちゃいましたね!!」
ニコニコと普段と変わらぬ名字を見て、斉藤をはじめ一同が少し焦る。コイツは本当に粛清の意味を分かっているのかと。
「んふふ、隊長とならこんな砂利の上でも楽しいです。」
「名字…、ピクニックじゃないんだぞ。」
近藤が呆れたように名字に言った。
かくして裁判は始まった。
斉藤から事前に言われていたため、スピーカーから聞こえる万事屋の言葉には驚かなかった。それにしても、万事屋、斉藤のキャラから離れていっている、助かっても助かった感じがしないぞこれだと。
銀時らしき言葉通りに斉藤は日記帳を取り出し、読み上げるフリをした。
すると出るわ出るわ副…じゃない怪しい誰かと、沖…でもない殺人未遂犯と、局長の……、あぁ、この前読んだところの事だ。本当に斉藤が毎回このような事を告発していたら、真選組は多分なくなっていた。
見逃して正解だと思う。
「詮議の程を言い渡す。斉藤終、無罪。これにて閉廷!!」
「じゃねェだろォォ!!」
「こんにゃくに何したァァァ 局長ォォォ!!」
「まさか、あの時のこんにゃくぅぅ!!」
近藤はしっかり湯通しをしただろうか、そうじゃないと事後磯臭くなる。確か冷蔵庫に入ってるこんにゃくは海藻粉末入り、あれは痛いと思うのだが。
「隊長もこんにゃく、食べちゃったんですか?」
そう振ると斉藤はフルフルとすごい勢いで首を振った。
こんにゃくのせいで大爆発した隊士達の怒りで、裁判の内容とは全く別の方向へ向かう。
「皆の言う通りだ!!この事態こそが斉藤隊長の悪行の証拠!!この男は内偵の特権を利用し、隊内を調査する名目で隊員の弱みを握り、こうして幹部さえも自在に操っていたのだ。諸悪の根源はこの男、斉藤終だ!!皆で裁きを下そうではないか、我等の真選組を汚した裏切者に!!」
「何言ってやがるあのクソ野郎…。」
立ち上がり殴りにかかろうとすると、斉藤に腕を掴まれ座らされる。
「皆サーン。私は内偵という仕事柄、誰もしりえぬ皆サンの情報をもっていたのは事実デース。シカーシ、コレを脅迫の材料に使った事などはアーリマセン。この白州に立たされ、しゃべれといわれたからしゃべったまでの事。本当はしゃべりたくなかった、私の胸にとどめておきたかったデス。デスガ、まだ裁判が続くとなるならば、私は身の潔白を証明するためしゃべらなければならない。」
隊士達の焦りがよく伝わってくる。さすが銀時、口はよく立つ。
「そこのアナタの秘密も、そっちのアナタの秘密も。」
「じゃあ皆さん、おつかれしたァァァ!!」
おつかれしたァ!!と先程の空気とは反対に隊士達皆が冷や冷やとしながら立っていた。
「待てェェェェェェ!!貴様ら一体どれだけ後暗い秘密を抱えているんだ!!」
「局長の言う通りだ、このまま傷つけ合っても、斉藤隊長より俺達が損するだけだ、真選組が全滅するだけだ。」
「貴様ら一体どんな警察!?」
柱が必死に斉藤の処刑を望むように、噛みつき続ける。
「俺は納得できんぞ!!この男はあろう事か俺を攘夷志士と侮辱した!!このまま引き下がったのでは武士の名折れだ!!局長!!俺にこの裏切…!」
カランと柱から刀が落ちる。
「……隊長に剣先を向けるなクソヅラァ!」
「貴様!」
目にも止まらぬ早さで柱の前に現れた名字は、手刀で柱の手首を叩き落した。その目から斬撃が来るのではないかというほど、刃の如くギラついていた。
「名字テメェは落ち着け。」
土方は斉藤に刀を投げ渡すと、名字の腕を捻りあげた。
「だったら、むこうにも命じてやればいい。裏切者を粛清しろと。」
「トシ!!」
「ゴチャゴチャゴタクはきき飽きたぜ。ここにいるのは剣に生き、剣に死ぬ覚悟がある者達だ。弁舌に勝った所で誰も納得しやしねェよ。言いたい事があるなら剣で語れ。負けた方が裏切り物、勝った方が正しきもの。解りやすくていいじゃねェか。その剣で、己の正義を三番隊隊長の正義を証明してみせろ。それが真選組ってもんだろ。」
斉藤と柱が向き合う。
「フッ…面白い。あの時の決着、ここでつけようではないか。」
「まっ待ってェェェ!!柱さんんんん!!終ぅぅぅぅぅぅ!!」
柱が斉藤に切りかかる。桂の唐竹の押し切りを、斉藤は刀を重ねて防ぐ。
柱の鮮やかな太刀が斉藤を攻める。
「土方さん!離してよ!!」
「うるせェ、黙って見てろ。」
防戦だった斉藤は、万事屋達の台詞に合わせて動き出した。そこからは、台詞合わせに斉藤も万事屋も四苦八苦した。その結果、斉藤は寝てしまった。
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