や、やめろ。
眠ってしまった斉藤に、万事屋の説明が入る。
「こ…これがZ解!?」
ま、まさか。
「眠っているように無防備に見えて、あらゆる攻めを飲み込む「虚ろの構え」だと。」
馬鹿で良かったァァァ!!!!!
桂は真面目過ぎて裏目に出る、これを馬鹿と言わずなんと言えよう。
「ダ…ダメだ。スキだらけに見えて一部のスキもない。打ち込めば虚に飲み込まれ命はない。ならば…。」
バサッと布団を敷く柱。
「これしかあるまいィィィ!!」
お前の頭が既に虚に飲み込まれいる、そう名字は思ったが何も言わないでおいた。
あまりにもツッコミどころが多く見ているのにも疲れる。自分の師に最早呆れた。
寝苦しそうにしている柱は自らヅラを取ってしまった。
「やはり、こっちもZ解しないと。」
もう嫌だ。
土方が腕を離し、桂の方へ足を向ける。
「じゃあ、そのまま永遠にZ解すればいい。Z。」
隊士達が桂を取り囲み刀を向ける。ドフンという音と共に煙幕が炸裂する。
「斉藤ォォォ!」
ハッと目が覚める斉藤。
咳きこむ隊士の中に桂はおらず、屋根に上がっていた。
「あともう少しで完全に真選組を乗っとれたものを、よくも俺の正体を暴いてくれたな!」
「オメーが勝手に墓穴掘っただけだろォォ!!」
「貴様の邪魔で第一目的は果たせなかった、その褒美に一ついい事を教えてやろう…。なぁ、名前。」
桂が何を言おうとしているか分かった。それを言われれば、ここには戻られないどころか江戸にはいられない。
「や、やめろ…。」
「―鬼兵隊の飢えた番犬…。」
「やめろォォ!」
「猛犬の名前!!」
「師匠貴様ァ!!!」
騒然とする屯所、こちらもゲームオーバーというわけか。
「猛犬の名前って!」
「攘夷戦争で大剣を振り回し、一振りで多くの天人を捩じ伏せ、その猛々しい姿から付いた名が猛犬。鬼兵隊では野犬のように荒々しく船を守るところから、暴れ足りず、飢えを満たすために戦う番犬として恐れられた狂戦士。まさか、女だったなんて。」
聞き覚えがあったのか、隊士が二つ名を呼ぶと山崎が説明をしていた。
皆が驚いたように自分を見る。
固まる隊士に対して、土方は名字の首に刀を添わせた。
「俺を陥れようとするからこうなるのだ名前よ。…既に第二の布陣はしいておいた!ウハハハハ、エリザベスが貴様などに手懐けられるか!!貴様の気が俺に向いている間に、屯所中に爆弾をしこませてもらったぞ!この起爆スイッチ一つで貴様の努力は、屯所と共に塵芥となるのだ!!」
屋根瓦を破壊しながらゴォウと刺突を繰り出す斉藤。桂は急所は避けたが、頬に一筋の赤が走った。
お互い見つめ合い、桂は不敵な笑みを零す。
「ゆくぞエリザベス!!」
颯爽と走り去っていく桂、逃げは桂の十八番何故斉藤は迷う。
「終ぅぅぅ!!爆弾の処理は俺たちに任せろ!」
ちらりと斉藤が名字を見ると、土方は仕方なさそうにため息をついた。
「コイツの処断もお前が帰ってきてからだ!!おまえは奴を…裏切り者を追え!!」
斉藤は風が吹くより早く走った。風が彼を追いかけるように渦をまく。
「三番隊隊長はお前だァァ!!」
あれが、本気の斉藤。得意なのは突きだったのか。思えば打ち合いの時も稽古の時も、一度も出されていなかった。
斉藤はひらりひらりと素早い攻撃は、刺突に転用するため、旋風の様な彼の剣捌きは自分にないものばかりで憧れる。
ぼんやり斉藤の行った先を見つめていたが、喉元の刀に意識が戻る。
「バレちゃいましたね…。」
両腕をあげた名字は、悪戯をしたあとの少女のように微笑んだ。
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