またね!
「そういえば、先ほど私にお仕事してもらいたいと仰ってましたが、いかが致しましょうか!」
うんこの隊長の元働ける喜びに緩ませた頬を隠しもせずに問いかけた。
みんなの顔がいっせいに曇る。
そんなに難しい仕事なのだろうか、私が適任だと思って任せられたと思ったのだが違うのだろうか。
緊張のあまりゴクリと喉が鳴った。
カタリと戸が開く音がし、フラフラになった地味めの人が入ってきた。
「や、山崎ィ!!!」
「やっぱり山崎でもダメだったか。」
「まず山崎は元ヤンだから論外でさァ。」
元ヤンってこの人いくつなんだろう、最近のことなのかな。あぶない人っぽい。
そう考えていると、局長はを心を決めたようにこちらを見た。
「名字!君には今から要人の世話に当たってもらう!着いてきたまえ!」
「はい!」
ザッと歩き出す一同。
物々しい雰囲気に大太刀を握る手が痛い。
ある部屋の前で止まると扉を開けた。
そこには隅の方で震える小さな女の子がいた。
「実はな、迷子の子を保護したはいいんだが真選組には強面のやつばかりだろ?あのように怯えてしまってな。総悟に任せたんだが、緊張は解いたものの、何か気に障るようなことを言ってしまったらしく、もっと怖がるようになってしまった。」
ポカン、とあいた口が塞がらないのはこの事か。
しかし、幼女が怖がっているのも事実、ここは真剣にお仕事を引き受けよう。
「そのお仕事引き受けました!」
沈夜鎮魂丸を預け女の子のところまで行く。後から突然人が来て驚いたようで、泣き腫らした目にまたじわじわと膜がはられていく。
女の子と目線を合わせるためにしゃがんでニコリと笑った。
「はじめまして!名前だよ!」
そう言うと女の子はキョトンとしてこちらを見た。
「あなたのお名前は?」
「おしん…。」
「おしんちゃん!ふふ、可愛らしい名前ね!」
おしんは頬を赤らめ可愛らしく笑った。
「お母さんが来るまでここで遊んでいようか!」
「うん!」
もう、大丈夫そうだ。
近藤達はその場を離れ、各々仕事へ戻った。
二人は絵を描いたり、おしゃべりをして母親が来るのを待った。
しかし、おしんも泣き疲れており話の最中に寝てしまった。
それを見た名字は押し入れから掛け布団を出し、おしんにかけた。
とん、とん。一定のリズムで深く眠るようにおしんを寝かしつけていたが、名字も暖かな日差しを浴びてスーッと寝てしまった。
近藤がおしんの母親を部屋まで連れてくると、二人は同じ顔で柔らかな光の中眠っていた。
それを見た近藤は年相応の顔ができるじゃないかと少女見ていた。
「……、あれ、局長。そちらの方はおしんちゃんのお母様でしょうか?」
人の気配で起きたようで、眠たそうに眼を擦りながら問うた。
「ああ、そうだ。この子の事をずっと探していたようだ。」
「そうなんですね、おしん、おしんちゃん、お母様迎えに来てるよ。」
トントンと軽く肩を叩くとおしんは目を覚ました。
「おかあさぁん!!!」
「おしん!!!!」
ひしっと抱き合い、嬉しそうにおでこをくっつけあっている。
その後おしんはまだ名字と遊ぶと泣き喚いたが、またお母様がいない時においで、と次も迷子にならないように屯所に来るよう勧めていた。
「ばいばーい!!!!」
「またね!」
日が落ちて来てかぶき町が赤く染まっていた。
ふっと近藤は名字を見やる。
夕日に照らされた名字の横顔に影がさし、夕暮れの橙がおしんを見つめる少女を、清らかな神聖なる存在に感じさせた。
その女の横顔は母そのものだった。
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