ご紹介にあずかりました
「えー、本日の報告は皆知っての通り、我々と同じ志をもって働いてくれる新たな隊士が増えた、名字。」
「はい!ご紹介にあずかりました、名字名前です!!先程は失礼いたしました!私!町の平和を守るお仕事に憧れていました!お仕事のこと色々教えて下さると嬉しいです!よろしくお願い致します!!」
さっさと浴衣の崩れを直したあと、名字待ちだった朝礼は始まった。
満面の笑みの名字はあどけなく、先程の艶美な女とは似ても似つかなかった。
「名字には終将る、三番隊に所属してもらう!終、頼むぞ!」
「……。」
コクリと近藤を見て斉藤は頷いた。
よく煮えた油に水を入れたように、拍手の音が爆発した。
「じゃあ、時間も時間だ。食堂に行って朝食にしてこい!」
「はい!」
隊士達がおもいおもいに散っていく。
斉藤が名字に着替えを済ませてから朝食に連れていく旨を伝えようとしたが、数人の隊士が名字と話していた。
「ねー!名前ちゃん!朝弱いの?」
「はい!起きちゃえば大丈夫なんですけど、起きるまでがダメで。本日はすみませんでした。」
何か蟠(わだかま)りがあるような感覚がする。
伝える事ができなかったことに対してのモヤモヤなのだろうか。
布の下の口端が下がる感覚がする。
「いいのいいの!気にしないで!名前ちゃんって実際いくつなの?十八くらい?」
食堂へ行こうとした隊士がピタリと止まり聞き耳を立てる。
「え、歳ですか?私は二十(ピー)ですけど…。」
周りの隊士達は一斉に名字の方に振り返る。
「二十(ピー)だとォ?!」
「有り得ん!いや、寝起きの時のあれなら…。」
「マジですかィ、俺より年上だとはねィ。」
周りがざわつき名字を上から下まで舐め回すように見る。
するとクイッと名字の袖が引かれた。
「隊長?いかがなされましたか?」
何かを伝えたそうに目線を右へ左へと忙しなく動かす斉藤にくすりと笑う名字。
「部屋へ行きましょう!そこになら書くものがあるんで!」
斉藤の腕を掴み自室へと歩む二人。斉藤は引かれる手を見てすこし目尻を下げた。
名字の部屋についてノートとペンを差し出される。
「よろしければこちらに、ご要件をご記入ください!」
名字は斉藤の目をジッと見つめた。
その目は爛々と輝いていて、餌の前に待たされる犬のように見えた。
「どうかされましたか?」
見つめられたまま何も書くことがない斉藤に対し疑問に思ったのか小首をかしげて尋ねる。
ニコニコと微笑む名字の背に尻尾が見える。
自分でもどうしたのか分からず、とりあえず目的を伝えるべくペンをとる。
[名字さん、まずは着替えてください。そうしたら食堂に行きましょう。私が案内しますZ。]
「Z…?わかりました!着替えないと寝間着のままではだらしないですもんね!」
そういう彼女に、待ってるZと書いて見せ外へ出る。
その直ぐに「あ、」っと聞こえてきた。
「そういえば着替え、というか、隊服ない!!!」
大丈夫だろうか。
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