申し訳ないです!
着物に着替え髪を二つに結う。いつも気合いが入りすぎるのかかたく結びすぎて、おさげが少し浮いてしまうが気にしないようにした。
顔を洗うため隊長にもう少しだけ待ってもらうように言うと、そんなに焦らなくていいからと書かれた。
いつものように用意しているのだが焦ったように見えたのだろうか。
「お待たせしました!」
[まだ大丈夫ですZ。それより、頭の寝癖はいいのですか?]
「寝癖?ああ!この反りたってるやつですね!いつもです!なおらないんですよねーこれ!」
[ちょっとそこに座ってください。]
書かれたとおり座ると斉藤は両方のねじり棒を取って、髪に櫛を通し始めた。
隊長の成すことなので、文句は言えないがやってもらうのは申し訳ない。
「た、隊長!申し訳ないです!」
スッと櫛の柄が後頭部を真っ直ぐなぞる。二つに分けた髪をまたねじり棒で結い直した。チラリと鏡台に写った自分の髪を見ると寝癖もなく綺麗に結わえてある。
それに髪もいつもより浮いてなく、ひらひらと大人しく揺れている。
[勝手にやって申し訳ないですZ。急かしてしまったみたいでしたから。]
「いえ!!感動しました!こんなにキレイにまとまってるの、旧友にやってもらった以来ですよー!」
ありがとうございます!と嬉しさと恥じらいが混じったような笑顔で名字は礼を言った。
食堂に二人で行き朝食をもらう。近藤に話があるので、食べ終わって茶を飲んでいる近藤の近くに席をとる。
「局長!!私の隊服はどうなりますか?」
「あぁ、それなら今日採寸して一着だけ明日着れるように仕上げてもらうよ!」
「わあ!ホントですか!!!」
「シャツは用意するが、上着とズボンは申し訳ないけど少しの間着回ししてもらえないかな?」
「わかりました!私も隊長みたいなのが着たいなぁ。」
斉藤を透かして自分を想像しているのか、頬が少し赤らむ。
「何言ってんだ、ああいう隊服は隊長、副官格の奴が着るんだ。」
「えー!私も隊長とお揃いがいいです!!!」
「お前だけ特別ってわけにいかねぇだろ!」
「隊長ー!!!私隊長とお揃いがいいですー!」
「また終に頼むのか!部下のくせに!!」
ギャンギャンと土方と吠え合う名字。どうやら二人はあまり馬が合わないようだ。
「それじゃあ、採寸されてきますね!!」
「…。」
門の前で見送ってくれた斉藤に挨拶をする。
斉藤はコクリと頷くと紙袋を名字に手渡し、中から紙を出して開けて渡してくれた。
[私が使おうと思ってた上着ですZ。頼む時にサイズを間違えたのか、小さくて着れないので良かったら名字さんのサイズに直してもらって来てください。]
「わ!私が着てもいいんですか!」
「…。」
コクリ。いつもよりゆっくりと頷いた斉藤は心なしか照れているように見えた。
「ありがとうございます!えへへ!では行って参ります!」
名字の足取りは軽く、楽しそうに歩いていった。
見送る斉藤の表情も楽しげに感じた。
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