※5話の閑話
※相澤先生視点で短短短文



今年も春がやってきた。
桜舞う季節はなんとも億劫に思える。将来を夢見てノコノコやってきた輝かしい瞳を仄かに浅黒く侵蝕し始める現実に押し潰されて、散って逝く。そうなる前に排他するのも教職員たるものの責務と重きを向けた。

名簿を眺めながらカリキュラムを設定していく。
仕事は山のようにあり、課題は海のように広がっていく。今年は有能な人材が豊富なだけ遣る事も多い。無造作に広がる頭皮をがりがりと掻きながら編み出している横で、無遠慮に座り声をかけてきた陽気な男が居た。



「美人だったなDivaちゃん」



騙されている男がここに一人。憐れだと横目で見遣るが、それだけで。言葉を投げかけることは敢えてしなかった。



「外面だけな」
「でもいいじゃんかよ。お前は教師としてあんな美人の生徒を……うわっ変態だな」
「お前のことか?大正解だな」
「にしても!女は恐いね〜Divaちゃんって年齢不詳じゃん?つっても成人は迎えている訳だから……イメクラ」
「それ以上発言したら警察呼ぶぞ」



固定電話に手を伸ばす真似をすると、マイクは慌てて「冗談」だと告げた。本気でかけてやろうかと思っていた分残念な気持ちで一杯だ。



「同僚を売るなよ」
「お前の減らず口をこれ以上聴かなくていい方法だと思ったんだがな」
「合理性っていうか、強行手段なソレ。軽く傷ついたわ」
「そうか。そいつはよかったな」
「なにがだよ……しかし、女は化粧でメイクアップってか」
「それは同意する」



Divaの容姿は国民に愛されるため、美人だ。
誰が見ても彼女の事を美人だと認めるだろう。だが、実際のDiva事邪神禄は顔も体型も変わらない。だが、胸部だけは虚偽だったことは…少なからず世の男共の士気は下がったことだろう。女は大変だな……。



「先生と生徒の恋愛とか、お前できそうだな。下手したら」
「…勘弁してくれ。あいつは霊長類だから、女に視えない」
「うわ……辛辣」



世にも珍しいという顔つきでマイクが口元に手を揃えているが、今日まで何度殴られたことか。しかも一発一発がほぼ急所。仕留める気満々の狩猟に恋愛なんて塩気の聞いた菓子にも劣るというものだ。考えただけでも鳥肌が立つ。
携帯端末機がバイブレーションで主人を呼ぶ。中身を確認するため電源を入れ操作している横でマイクは「ツンデレかよ」と呟いたのは敢えて聴こえないフリをした。



「待受け画面Divaじゃん。しかも幻のコスチューム版の」
「顔は好みなんだよ」
「……お前も結局男なのな」
「顔だけな」
「ってことは……制服姿も収めたか」
「抜かりないな」
「うわぁー、やっぱズリィ!担任羨ましいわァ!」



駄々を捏ねる子供のようにマイクが叫んでいた。



To be continued.......



犯罪行為である盗撮を平気で実行するプロヒーロー達、ってどうなんだろう?
実際の相澤先生は素敵な先生ですので、間違えないよう認識のほどよろしくお願いします。


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