とある街のとあるビル街。錆びれたBarの店内は日中のため閉めきっていた。
板の目に転移してきた死柄木弔は床にそのまま倒れこむ。銃創からは血液が留まる事を知らずに床を血に染めた。



「ってえ…両腕両脚撃たれた…完敗だ…」



起き上がる気力もないのか、死柄木はうつ伏せになりながらぶつぶつと呟き始める。



「脳無もやられた。手下共は瞬殺だ…子どもも強かった…平和の象徴は健在だった…!」



目を見開き死柄木は怒りの矛先を液晶画面へと向けた。



「話が違うぞ先生……」
「違わないよ」



液晶画面からは返答が返って来た。繋がっているようだ。



「ただ見通しが甘かったね」
「うむ…なめすぎたな。敵連合なんちうチープな団体名で良かったわい」



重々しい声とは別にご年配のしがれた声も聞こえてくる。どうやらモニターの先にはふたりいるようだ。



「ところで。ワシと先生の共作脳無は?」
「回収してないのかい?」



先生と呼ばれた人物からの問いかけに、答えたのは黒霧だった。



「吹き飛ばされました。正確な位置座標を把握出来なければいくらワープとはいえ探せないのです。そのような時間は取れなかった」



黒霧の状況説明と理由に液晶画面からはやや落胆を隠せないようだった。



「せっかくオールマイト並みのパワーにしたのに…」
「まァ…仕方ないか……残念」
「パワー…そうだ……」



死柄木は単語を聴き、思い出す。



「一人…オールマイト並みの速さを持つ子どもがいたな…」
「………へえ」



画面越しからは興味関心が惹かれる間が設けられる。



「あの邪魔がなければオールマイトを殺せたかもしれない…ガキがっ…ガキ…!」



悔しそうに死柄木が板の目に爪をたて研ぎ始める。



「悔やんでも仕方ない!今回だって決して無駄ではなかったハズだ」
「ええ、そうですね。“赤ずきん”を見つけました」
「……そうか。彼女を見つけたか」
「今はヒーローなんてやってるけどな」



嫌味を込めて死柄木は余所を向く。もう何年も思い出さなかったはずなのに、一度会ってしまえば脳裏に、瞼に焼きついて離れない。厄介な女だと死柄木は毛嫌いした。



「ヒーローか、彼女らしい……精鋭を集めよう!じっくり時間をかけて!彼女も時期にこちらへ戻ってくるだろう」
「先生。もう少しきつくいいつけてくれますか?セルキーも放置してきたのですよ、彼は」
「おや、調整中だと思っていたが」
「これ以上は喉に負担をかけるので終了しました。というか俺も協力したんですけど」
「ああ、すまない。ワシの手柄だけじゃないな。優秀な助手がいてこそじゃ」



更にふたり、液晶越しに追加された。



「我々は自由に動けない!だから君のような“シンボル”が必要なんだ。死柄木 弔!!次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!」



死柄木は床に伏せながら瞼を閉じる。何故こんなときにあいつの言葉を思い出してしまうのだろう。最近全然顔を出してくれなかった思い出が、ひょっこり顔を出す。



『 正義だからこそ暴力を奮うのは間違っている。敵だから暴力を奮うのも間違っている。根本は自分が信じるためのものに正を奮うこそが人間の本質なんだ。今の敵という存在は悲しいね……暴力でしか相手に語れないんだ。話し方を知らないだけなんだよ…… 』


「……それはお前もだ」



―――信じる為の物に奮う暴力で己を殴り続けるお前は哀しいってことだろ





◆◆◆






「先生。まさか禄を連れ戻そうなんて思っておりませんよね」
「何故だい?君を裏切って、私を裏切って、そんな大罪人を今更戻す訳がないだろう」
「そう、ですか……では次の時には私が出陣します」
「君が?いいのかい?宣戦布告になるんじゃないのかい?」
「構いません。素より生半可の覚悟でここにはおりません」



失礼します。とブロンドの長髪をたなびかせ碧眼の瞳が緩やかに去る。その後姿は誰もが振り返る程の美に溢れた女性。そのあとを錆びれた金髪と碧眼が追いかける。白衣の白が翻るたびに風を起こし、室内は元のふたりだけとなった。



「嘘を嘘で塗り固めるとは」
「何も嘘を言っていないよ」
「わざと逃がした癖に、よくいうワイ」
「仕方ない。それは彼女の成長を促すためだ……あの子は強くなる。その素質を持っているだからこそ……プレゼントを贈ったんだ。

弔の隣には……絶対に必要なんだ邪神禄が――――」




To be continued.......




アンケート関係なくすみません。書く場所が本編になかったので閑話で。
死柄木さんの〜〜閑話〜〜〜〜まだ二個目〜〜〜。



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