そんなある日の共同作業

「じゃん」
「…なんだそれは」
「1000ピースパズル。ネイガウスさんと一緒にやろうと思って」



買い物行ってて、たまたま見つけた1000ピースのパズル。
確かネイガウスさん、パズル好きとか言ってなかったかな。じゃあ一緒にやろうかな。
そう思って、なけなしのお金で買ってきたのだ。
難易度は、そこそこ高いと思う。
ネイガウスさんはビールを一口飲むと、そのまま黙って指で隣をちょいちょいと指した。
やってくれると思ったよ!
さすがネイガウスさん男前!
とか、声には出してないけど多分顔には出していて、私はそのままニッコニコ笑いながらネイガウスさんの隣に座った。



「お前、1000ピースはやったことあるのか」
「ん?ないよ。せいぜい250」
「……よくやろうと思ったな」
「ネイガウスさんがやらないならそんなこと思わなかったよ」
「はあ…、まず同じ系統の色で分けろ。隅が見つかったらそれもその中でよけておけ」
「いえっさー!」



言われたとおり、地道な作業を繰り返していく。
地道かつ地味。ネイガウスさんたらビール飲んでばっかりで手伝ってはくれないようです。
作業に疲れてきたところで、まだ半分を色を分けれていない。
あれ、早くも挫けそうだ。



「手が止まってるぞ」
「手伝ってよ」
「色を分けるくらい一人でできるだろ」
「けち!」
「飲み終わったら手伝ってやる」
「神!すき!」



じゃあがんばるーと上機嫌に作業を再開。
このままパズルやる気ないんだと思ったよ。
私はネイガウスさんを信じてた。信じとったよ。



「どんな絵なんだ」
「えへへー。それは秘密!」
「やりにくいだろ」
「でも秘密!」



だってやってる最中で絵を知ってもらいたかったから。
ネイガウスさんならできるよ
無茶を言うな
そんな会話をしながらネイガウスさんと地味な作業をしていく。
ネイガウスさんの分別はプロ並だった。
私の速度の五倍はある。ちょっと言い過ぎかもしれないけどそんくらい速い。
せっかくなので動画に納めようとしたらコンパス(通常サイズ)が飛んできた。
大きく外れたから(多分わざと)ケガなんてしなかったけど、むちゃむちゃ冷や汗かいた。携帯をしまってまた作業に戻る。
ネイガウスさんたら何も言わないから更に怖いのよ。



「や、やっと終わった!」
「絵を見せろ」
「えー…」
「お前完成させる気ないだろ」
「一応ある」
「いいから早く見せろ。永遠に終わらんぞ」
「……。」



反抗できない自分が悔しいぜ。
そんなことを思いながら、私は立ち上がると自分の部屋にパズルの入っていた箱を取りにいった。
パズルの絵は、親子の絵。
お父さんと、小さな女の子の絵。
写真ではなくて、絵だけれど、私はその絵のお父さんが、なんとなく、ネイガウスさんに見えて思わず買ってしまったのだ。
お父さんはネイガウスさんよりも、とっても優しそうなんだけどね。
その親子は、幸せそうに微笑みながら、抱きしめるようにして、お互いの額を合わせている。
その光景は、この先もずっとって。そんなことを感じさせるもので、うん、自分の願望もあるんだと思う。魅入ってしまったわけで。
遠回しに、ネイガウスさんとずっと一緒にいたいなって、伝えたかったわけで。



「はい。これ」
「……。お前らしいな」
「っ、うん!」



早く仕上げるか。
そう言ったネイガウスさんに私の頬は緩みっぱなし。
にまにまと笑っていると、ネイガウスさんに変なものを見るような目で見られたけど、それでも顔は締まってくれない。
早く仕上げるかって。
早く完成した絵が見たいって捉えてもよろしいですか。



「この子ども、お前によく似てる」
「え?」
「頭が悪そうだ」
「……ネイガウスさんも、よく似てるよ」
「そうか?」
「だって、あったかいんだもん」



感じることは、二人とも一緒ってか。
頭が悪そうだとかは置いておいて、ネイガウスさんがそう思ってくれたことに、すごく嬉しかった。



「んふふふ」
「笑うな。気味が悪い」
「いやいや、じゃあこれは私とネイガウスさんなんだよ。きっと」
「…。」
「ぎゅーって。ほら、ネイガウスさん。ぎゅー」
「いいから、早くやれ」
「はぁい」



あしらわれてしまったけど、気分は最高に幸せだった。
もうなんていうかね、いつからファザコンになったんだろう私。
幸せを噛み締めながら、他愛のない話をしたりして、二人で空いてる時間はパズルに費やした。もちろん、勉強もしてた。普段なみに。
そして制作開始から、一週間。
私にしては早い方だと思ったけど、隣でネイガウスさんが思ったよりかかったな、と呟いたのを聞いて、少しどころか、だいぶ驚いた。



「やっぱ、1000ピースは大きいね」
「次は2000ピースやるか?」
「いいのがあったらね!」



正直、楽しかったけどすごく疲れた。
パズルを額縁にしまい壁にかけてみる。
そこには幸せそうな二人の親子の姿。
ずっとずっと、幸せそうな、家族の姿。



「ネイガウスさん」
「ああ」
「私も、こうしたいです」
「…だから、お前は何歳だ」
「うへへへっ ぎゅうー」
「暑苦しい」



とか言いつつネイガウスさんは拒んだりしない。
余計に私が調子に乗るなんて、きっと分かってるはずなのに。
あの親子に負けないくらい幸せそうな顔を、少なくとも私はしていることだろう。
抑えきれない感情を、ネイガウスさんに回す腕に注ぎ込ませた。





(そんなある日の共同作業)

「じゃあこれで勉強する時間が増えたな」
「まじ勘弁」






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100000hit 茂田様リクエスト
「指切り」でネイガウスとイチャイチャ

遅くなりました。
上手くイチャイチャ感が出せたかどうか…
どうしてもネイガウスと一緒にパズルをやらせたくて、でもパズル苦手な私がどうすんだってなって、少しばかり苦戦しましたが書いてて楽しかったです^^
お持ち帰りは茂田様のみになります。
100000hit、ありがとうございました!back