10.ハプニング


いつも通りの部活を終えて、またそれぞれ片付けを開始する。
まだ私だけじゃ至らないところもあって、同級生の男の子とか先輩達に助けられる事もあるからいつも内心土下座してる気持ちで感謝している。正直練習も大変だと思うのに、逢坂1人じゃ大変だろ〜なんて笑うみんなは凄いと思う。でも勿論嬉しいんだけど、やっぱり1人でちゃんと出来るようになりたいなとも思ってしまう。まぁまだ入って1ヶ月も経ってないし、逆に他の人に頼らずに1人でやろうとして大失敗、よりは余程いいと思う。

今日も牛島先輩は自主練するのかな。
なんてほんの少しよぎった考えに、頭を巡らせる。
ちょっと前の白布先輩についていって、2人の自主練習を少し手伝った(といってもボール出しだけど)やつ以降は私は大人しく寮に帰っていた。
見たい気持ちはめちゃくちゃあるけれど、ボール出しかドリンクかタオルしか出せないしなぁ。という考えになる。見たい気持ちはめちゃくちゃある、本気である。
ダメだ、未練がましく考えてたら本当見たくなっちゃう。まだ仕事に慣れてないんだからそっちを優先しなきゃなぁ。




「…あ。」

寮に帰って、鞄の中身を漁って気づいた。個人的に割と重要なものがなかった。
携帯、着替えた時に忘れたかもしれない。

一応時間を確認する。18時、多分まだ大丈夫だと思う。外は暗いけど寮だし、まだ就寝時間でも何でもないし、さっと行ってさっと帰ってくれば大丈夫。
そうと決まれば行動は早い方がいいと、身近にあった上着を手に部屋の扉を開けた。

見渡しても時間が時間なのでまぁ友達とか他のクラスの子とかも見かけた。変にキョロキョロしてるよりは普通に歩いていた方が怪しまれないだろう。というより別に体育館の方に携帯を取りに行くくらい変じゃないか。

「あれ、弥子どこ行くの?」
「ちょっと忘れものしちゃったから急いで取りに行ってくるね〜。」
「そっか、気をつけてね〜。」

ありがとう、なんて返しながら早足に体育館に向かう。寮の外に出れば肌寒い風が吹き、思わず震えてしまう。
春、されど5月、されど宮城。
さっさと体育館の方に行って携帯を見つけなきゃ。




「えーっと…この辺で…あ、」

あった!!
見慣れた黄色の携帯はすぐそこにあって、何かおかしいところないかなと確認する。
充電も平気、割れたとかもない、私が最後にいじった時と変わらなかった。よかった、と胸をなで下ろす。とりあえず目的の物は取ったし帰らなきゃ。

「…?」

扉を開けようとドアノブに手をかけた、はずなんだけど…回して引いてもガチッと音がして開かない。
嫌な汗が頬を伝い、また確認のためにドアノブを回して引いてもさっきと変わらない。
…鍵かかってる?これ?
いや、いやいやいや、確かにバレないようにと明かりはつけてなかったけど。
つまりこれって、

「…閉じ込められた。」

そんな予想、というか確定事項がよぎって目の前が真っ暗になりそうだった。
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