07
氏名: 一条 ナマエ
階級: 幹部構成員(第一種特別幹部)
性別: 女
年齢: 21歳
身長: 162センチメートル
体重: 50キログラム
能力名: 不明
異能力: 解析不能
歴:
一条家末娘、眞神神社の守り巫女。眞神神社の守り神である空狐と龍神の加護を受け、幼少の頃より神通力を有していた事が確認されている。ただし余りの力を制御出来ず、暴走。
7歳を迎えた年、横浜総合開発研究所の地下実験場に隔離され、異能力開発研究の被検体となる。
15歳の年、再び力が暴走し当時実験場にいた職員、推定28人を殺害。及び研究所を破壊した。
その際、研究所視察に出向いていた組織構成員に保護され、ポートマフィアに加入。
備考:
現在確認されている能力は、体内から炎を出現させ形状・出力(威力)・状態を自在に変化、操る事が出来る能力。加えて、主に外傷に対しての治癒能力が非常に高く、致命傷以外の傷は自然治癒可能。
この治癒能力と異能との関連性については現在調査中。
パサリ、と静かに音を立て資料をテーブルに置く。
彼女の経歴や異能力については謎が多く、未だに調査を続行している事が多い。
普通であれば性能を理解しきれない駒は手元に残さず末梢する所だが、彼女に限ってはそれを実行しない。
異能力・戦闘能力・交渉術・戦略知識。そして彼女の最大の武器である"女である事を理解している"手腕。
それに人望や指揮能力が加わる組織にとって申し分ない存在だ。
最高の切り札(ジョーカー)だ、とポートマフィア首領に君臨する男、森鴎外は考える。
ナマエの体調不良の知らせを聞き、一旦は会議の延期が検討されたが、勇敢にもポートマフィアに戦争のきっかけを作ってきた組織の動きは速く、事が軍警に知られればマフィアにも火の粉が飛んでくると予想される。
当事者は欠席にはなったものの、一刻を争う事態を前に会議は始まった。
「…中々、元気のある連中もいたものだ」
溜息を洩らしながら森鴎外は口を開く。
表情は笑みを浮かべているものの、その人物の恐ろしさを知っている者達には緊張感が走る。
「申し訳ありません。事後調査が甘かった自分の失態です」
ナマエの代理で会議に出席していた彼女の第一部下である北原が口を開く。
会議独特の、しかもマフィアトップである首領を前にして、緊張感からその額には冷や汗が滲んでいた。
「まぁ、起きてしまった事は仕方が無い。それに、日頃の一条君の功績を考えたら些細な事だ」
「…恐れ入ります」
「そもそも、何故今になって交渉決裂など申しておるのじゃ?」
艶やかな着物を纏った尾崎紅葉が資料に視線を向けながら尋ねる。
その質問はこの場に居る誰もが感じてる事だった。
「この案件、直接交渉に出向いたのはナマエ本人であろう?粗相をする等あり得んと思うがの」
「それに関しては私も同感だ」
静かに話を聞いていた太宰が口を開く。
ゆっくりと首を傾け、その射抜くような視線を北原に向ける。
「君、同行してたんだろう?何か変わった事は?」
「…特にその様な事は無かったかと。ただ、交渉後に何かしらの火種があって今回の宣戦布告に踏み切ったと思われますが」
「へぇ…そう」
北原の返答に目を細めた太宰だが、それ以上の追及はしなかった。
太宰の探るような目にから只ならぬプレッシャーを感じ、額に滲んでいた汗が北原の米神を流れる。
「よし、この後始末は太宰君に任せるよ」
椅子から立ち上がり、ゆったりとした口調で告げる。
指名された太宰はやや冷やかな声で反応した。
「後始末の方法は」
「任せるよ。ただ、」
「後悔させてやるといい」
我が組織のジョーカーを切り捨てる様な真似をすると、どうなるか。
口には出さなかったが、意図をくみ取った太宰は短く返事をした。
「中也」
会議終了後、其々が持ち場へ戻る中、太宰は計らずしも相棒となっているの男の背中に声を掛けた。
先日のツーマンセルでの任務の際、太宰の嫌がらせにより死にかける羽目になった中原はこれ以上無い程眉間に皺を寄せ、低い声で答える。
「…何だよ」
「一寸いいかい?」
「あ?生憎だが俺は手前と違って忙し」
「いいから」
「話がある」
そう云った太宰の目は仕事の時の目をしていた。
中原はそれを直ぐに感じ取り、渋々彼の申し出に応じた。
「今回の件、どう思う?」
人気の無い所に移動し、前置きも無く太宰は中原に尋ねた。
「ああ…?どういう意味だ」
「そのままの意味だよ。中也は、どう思う」
「どうって…」
中原は改めて今回の件を脳内で振り返った。
先程の会議でも論点になったが、まずナマエが交渉を失敗するという事が信じられなかった。
過去にも組織にとって重大な交渉の場を取り仕切り、その巧みな話術と巧妙に仕組まれた駆け引きにより何度も交渉を成立させ、組織拡大に貢献してきた。
そのナマエが、今回のような難易度の低い交渉をしくじるなど、誰もが予想していなかった事だろう。
「……ナマエの交渉は失敗してねぇ。この戦争が始まった原因は他にある」
「正解」
壁に寄りかかり腕を組む太宰に、中原は問いかける。
「手前、どこまで掴んでんだよ」
「まだ何も?」
「おい、」
「ただ一つ言えるのは」
「最近起きたイレギュラーは全てナマエが関わった案件だ」
その一言を聞き、中原は目を見開く。
「この前のスパイ露見にしろ、今回の交渉失敗にしろ、全てナマエが指揮を取っているものばかりだ。ただ私もナマエの実力は理解している。今回のような失敗はまずあり得ない」
太宰から発せられる言葉一つ一つが中原の心臓に響いていった。
話の奥に潜む真相が見え隠れする感覚に、無意識に表情が強張っていた。
「何か、動いているのは確かだ」
核心に迫る一言で、時が止まったかのように空気が凍りつく。
「そこで忠告なのだけれど、中也。君はこの件動いては駄目だよ」
「あァ?何でだよ」
「この手の物は脳筋の君には不向きだ。何より事態を悪化させる恐れがあるし」
「誰が脳筋だ手前!!巫山戯んな!」
「まぁ落ち着き給えよ」
太宰の皮肉に反応し息巻く中原だったが、太宰が目配せをしている事に気付き動きを止めた。
彼の目線が廊下の向こうある階段に向けられているのを確認し、悟られないように小声で会話を続ける。
「今は泳がせて出方を見よう。それと、分かってはいると思うけど、この件は他言無用だ」
「…ナマエはどうする」
「ナマエにもまだ言わない方が良い。情報が少なすぎる上に、向こうの狙いが分からない以上無闇に動いても逆効果だ」
それに、と太宰は静かに続ける。
「ナマエ自身も薄々気付いている筈だよ。下手にこの事を伝えるとまた無理をしかねない」
その言葉に、今正に床に伏せっている彼女の姿が脳裏をよぎる。
「だから必要以上に警戒したり、感付かれるような動きは避けるんだ。ナマエの洞察力は侮れない」
「手前は如何すんだ」
「私は少し探ってみるよ」
廊下の隅に潜む気配が動いた事を確認し、目を細め口角を上げる。
「考えがある」
しおりを挟む
[*前] | [♯次]
ALICE+