青の破軍

4


「また、思いきったことを」


私は、話をすべて聞いて、苦笑してしまった。

参番組の間でちょいちょい話はあったけれども、まさか本気でやるなんて。


「だけど、やるなら今しかねえ」


オルガの言葉にユージンも頷いた。

確かに、それに関しては賛成だ。社長であるマルバが失踪して、今回の強襲の後片付けも終わってない。

1軍が1番不安定な時期だ。これ以上の好機はないだろう。


「……それに私も?」

「ああ。やってくれるか」

「……わかった。でも、条件がある」


オルガが、ぴくりと反応した。
私の秘密を知ってるだけに、私がどう出るかと警戒している。

……そんな大それた条件でもないから、そう構えなくてもいいのにね。


「ミカちゃんが破壊した敵のMS、あれのパーツを頂戴」

「パーツ? おいおい、なんでパーツが必要なんだよ。しかもお前に」

「わかった」

「おいオルガ!」


またユージンがオルガに噛みついた。ユージンは私のHi-νガンダムのことを知らない。

オルガは少しほっとしたようだった。


「話は終わりだ。決行は夜だから、それまで体を休ませとけよ」

「ちょっと待てよ、おい!」


オルガはそれだけ言うと、すぐに席を立った。ユージンも、オルガを追いかける形で部屋を出ていってしまった。


「……そうか。本当にやるのか」


オルガの言い分も、わからないでもない。自分達のことを考えたら…あまりいいことではないのだけれど…一番ベストな答えがこれなんだろう。

脳裏に今までのことが浮かんでくる。

心の中も、顔も体も、浅ましく卑しいおっさんたち。あの人たちの近くにいるだけでも、胸が苦しくて気持ちが悪かった。


気に入らないという理由で殴られた。

ミスをなすりつけられて、尻拭いで4日も眠れない日があった。

くだらない理由で何度も罵倒された。

女にとって一番屈辱的な行為も受けた。

そのすべてを、本来計画(計画とまで言うまでのものじゃないけど)とは違うけれど、返してやることができるんだ。


「……」


私は深くため息をついた。

今、私は復讐できることを喜んでいる。

喜べることが、悲しい。

命の尊さを学んだ。同時に、命はなんて軽いんだろう、とも学んだんだ、私は。


「体を……」


オルガが最後に言ったことを思い出した。

体を休ませろ、か。


眠れないのにどうして休むことができるだろうか? こんな固いベッドの上で。

だからといって、ただ横になっていても、夢の中のビジョンが鮮明に浮かび上がって辛いだけだ。

私は手早く着替えて部屋を出た。

なにより、ただ待っているのは性に合わないのだ。


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