やっぱり休憩時間は康太とおしゃべりできなくて。放課後になってから、帰り支度をしているところに康太がやって来た。
「行こうか」
と、言われて頷く。
彼方が目の前に現れた。
「あれ、二人で帰るのか? え、俺も混ぜろって」
「遊びに行くんだ」
しれっと言える康太が羨ましい。僕なんて、どうすればいいのかわからなくてただうろたえてしまう。
「それこそ俺も混ぜろって」
「二人で遊びに行くんだ」
「一人増えてお得だろ。連れてけ」
「悪いが二人で遊びたいんだ」
と、埒が明きそうにない状態にもつれ込んできたので口を開く。
「彼方、どうせバイトあるでしょ? 遊べても一時間くらいじゃんか」
「そうなのか? それならまぁ、いいか。一緒に来いよ」
ああっ、しまった。どうやら彼方に助け舟を出してしまう形になってしまったようだ。
やりぃ、と騒ぐ彼方と、ちょっとすねている僕と、やっぱり綺麗に笑っている康太の三人で学校を出る。
「どこ行く? 栄でいいか? バイト先栄だしさぁ、それに俺、服が欲しいんだわ」
「彼方って、バイト代全部服にいってない?」
皮肉を言ってみる。
「そうなのか? そんなに服ばかり買ってどうするんだ?」
康太の問いかけに、彼方は鼻を鳴らした。
「お前みたいな顔してる奴に、モテようとする俺の努力がわかるもんかよ」
地下鉄に乗って栄まで出る。相変わらず栄地下の床は磨き上げられていて、靴底が滑るの何の。
すたすたと、モデルのように整った歩き方をしている康太。その隣に歩く彼方は少し猫背だ。しかしながら、二人とも背が高いから、足のコンパスの違いがありありと出てしまう。
ちょっとだけ遅れて歩いていたら、すぐに康太が気づいてくれた。
「あ、悪い。もっとゆっくり歩く」
同じ速度で歩いてくれて助かる。
「それにしても圭を真ん中にして歩くとさぁ、宇宙人を捕らえたーみたいな図になるな!」
からからと笑ってくる彼方の背中を叩いた。
「ほら、地上に出るよ。パルコでいいんでしょ?」
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