「もち、栄で服買うならパルコだろ。女はいいよなぁ。地下でもどこでも服が売っててさぁ。男なん、こういうとこでないと服置いてないもんなぁ」
ぶちぶちと文句を言う彼方。
「パルコに行くならば栄でなく、矢場町まで電車で行けばよかったんじゃあないのか?」
康太の問いに、彼方が呆れたような表情を浮かべた。
「ばっか。俺ら乗ってたの東山線だろ。わざわざ名城線に乗り換えるくらいなら歩いたほうが早いって」
それもそうかといった風に頷く康太が可愛い。
十分くらい歩いたらパルコに着いた。すごい勢いで服を物色し始める彼方を眺めていたら、康太がTシャツを指差した。
「あれ。圭に似合いそうだ」
「圭はいいから俺に似合うやつ探して」
彼方君。その言い草は何だよ。
顔を顰めるのだけれど、あと三十分しか居れないんだからと騒ぐ彼方を見たら思わず笑ってしまった。
結局彼方は服屋に置いてあったアクセサリを買うと、挨拶もおざなりにバイト先へとすっ飛んで行った。
さて、と二人で顔を見合わせる。何だか恥ずかしさとか、そういうものが少し和らいでいたので、ほんのちょっぴりだけ彼方に感謝した。
「どうする? 服見るか?」
「うーん、服はあんまり興味ないけど、康太は?」
「俺も特に興味はないな。そうだ、腹減らないか? 何か食べようか」
「いいね。賛成! 何か食べたいものはある?」
「マックはこの間食べたから……圭は?」
「僕、きしめんが好きなんだよね」
じゃあそれにしよう、と言われて、なんだかこの会話はカップルっぽいなってにやにやしてしまう。
学生にも優しい値段のきしめんを出している店に着いて、並んで席に座り、注文をした。
きしめんって出てくるの早いんだよね。てんぷらがいっぱい乗っていても、六百九十円。財布に優しい。
ずるずると音を立てながら食べる康太が男らしくて格好いい。僕は少し恥ずかしくなって、ちゅるちゅるって吸うみたいになってしまう。
「何できしめん好きなんだ? うどんは?」
「うどんはいっぱい噛まないといけないけど、きしめんは何かすぐ飲み込めるでしょ?」
「……やっぱ、可愛いな」
ぎゅんっと顔に熱が上がってきた。
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