「こ、康太は好きな食べ物って、な、何?」

 どもりながらもたずねてみると、切れ長なまぶたを細めながら考え込み始める。

「特にこれといって……ああ、麺類ならば味噌煮込みうどんが好きだな。麺が硬めで食い応えがあるというか――」

「ご、ごめん。きしめん柔らかいのに、付き合ってもらっちゃって!」

 慌てて言うと、しまった、と言わんばかりに顔を引きつらせてゆく。

「や、そういう意味じゃあなくてだな。す、すまん。違うんだ」

「あっ、ご、ごめん。何か嫌な風に言葉を捉えたわけじゃあなくて!」

「いや、俺の失言だ」

 ど、どうしよう。康太がしょんぼりと肩を落とし始めた。

「ね、食べ終わったら名古屋まで出てみない? 映画観ようよ!」

 提案してみたら、ぱっと顔を輝かせ始めた。

「いいな。今何を上映しているかスマホで見てみる」

 きしめんを一気に食べ終えて、スマホで調べ始めたその横顔を眺めながら、こんなに幸せでいいのかなぁって思った。

 名古屋駅に向かう電車の中は混んでいた。東山線のここいら辺りはだいたいいつもこんな感じだ。東京だともっと混むのかなぁなんて考えている間に到着し、109シネマを目指す。本当は地下鉄からあおなみ線のささしまライブ駅まで乗り換えて行ったほうがそんなに歩かなくて済むんだけれど、やっぱり乗換えが面倒くさいから。

 名古屋駅近くにも映画館はあるけれど、それはミッドランドスクエアの中。あんなブランド物の店ばかりが入っている建物へ、制服姿で行くのはさすがに抵抗がある。

 しばらく歩くとななちゃん人形が見えてきた。ちょっと前は足の下を潜り抜けて、パンツが見えたーなんてはしゃげたんだけれど、今はそうできないようになっている。

 ななちゃん人形も秋の服にチェンジされていた。

「これ、どうやって着せ替えさせているんだろうか。着替えさせているところ見たことあるか?」

「僕も見たことないんだよね。人形自体は動かないんじゃあないのかなぁ。着せ替える服に工夫がされてるっぽくない?」

 と、会話をしながら歩いていたら、突然康太が顔を顰めた。

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