「どうかした?」

「いや、二人きりになりよったら名古屋弁で喋ろうと思っていたのにさ」

「今、少ししたでしょ?」

「まぁ、そりゃあ、な」

 あれ、顔が少し赤い。照れてるみたい。

「僕のため? この間、こてこての名古屋弁が好きって言ったから?」

「まぁな」

 うわぁ。嬉しい。もしかして一生懸命勉強とかしてくれたのかな。いまどき僕らくらいの年齢の人は名古屋弁で話したりしないのに。

「ありがと」

 早口で言うと、そっぽを向かれた。

「おみゃーが好きそやからな」

 胸がきゅんきゅんして、すごく照れる。

「ねぇ、もっと喋って」

 つい、腕を掴んでしまった。

 驚いたのか、康太の足が止まる。そして――手、握られて。

「なんか、こそばいわ」

 どうしよう、嬉しいよ。幸せだ。涙が出てしまいそう。

 康太が歩き出した。握られている手を引っ張られる。

「まっと、近づいて歩かんと、こけるぞ」

 繋がっている手から伝わってくる体温が、熱い。

「明日からは一緒に登校したいんやけど、どや?」

 これ、夢じゃあないんだよね。お願いだから、夢じゃあないって誰か言って。

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