*
目が覚めた。しばらく、ベッドの上で、ぼんやりとしてしまう。
夢、か。そうか。
なんなのこれ。どうしてなの。なんでそんな夢を見せるの。
携帯電話が振動した。メールを確認したら、康太からだった。
――外で待ってるから早く。って、これ……あれ? おかしいな。鳥井さんは? そうか、三人で登校するのか。
ああ、何だか夢と現実がぐちゃぐちゃに、混ざってきた。
支度をして外に出る。
……康太しかいない。
「あ、れ?」
鳥井さんは? とたずねたいのに、口を閉ざしてしまう。これはどっちなの。どっちの現実なの。夢の中の現実か、現実の中の夢か。もしも、康太と僕が付き合っている現実だとしたならば、鳥井さんのことなんて聞けない。だって、僕がそんな夢を見ていると説明しなくちゃあいけなくなる。
康太はきょとんとしている。
「ほれ、学校行くぞ」
そうか。名古屋弁かどうかで判断すればいいんだ。
「ねぇ、お前って言ってみて?」
「は? お前?」
ああ、駄目だ。この聞き方じゃあいけない。
「えびふらいを何って言う?」
「えびふらい」
そりゃあそうだ。
「ねぇ、鳥井さんって――」
「風邪引いたみたいだ。今日は休むって」
一瞬で、眼球の奥が湿り気を帯びた。僕は、馬鹿だ。
ぼんやりとしている間に学校に着いた。教室に入ると康太はすぐに自分の席に着いてしまったので、僕も同じく席に着こうとしたら、彼方が友人らと一緒にそこを占領していた。
「ねぇ、僕座りたいんだけど?」
「おお、おっす。悪いな」
なんて、やっぱり悪くは思っていないような態度で退いてゆく。
席に着いて鞄から中身を取り出す。
友人らをおいて、彼方だけがどうしてか近づいてきた。
「なぁ、課題やってきてたら見せて。あいつら誰もやってなくてさぁ」
と、彼らを指差しながら言ってくる。
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