「そいやぁノート。悪いんだけどちょっとヘマしたから修正液で消しといた」

「は? 何で僕のノートに書き込んでるのさ?」

「や、礼言っとこうと思って。写さしてくれてサンキューって書いたんだけど、これ写したこと先こうにばれるなと思って慌ててさ。ちゃんと消しといたから大丈夫だって」

 ――夢が、すごい勢いで迫ってくる。

 現実はどっち。夢はどっち。どっちなんて、決まっている。こっちが現実だ。本当に?

 悪夢を見続けているのでは? そういえば、あちらでは鳥井さんの存在が全く見えない。

「なぁ、お前暇だろ? 名古屋城行かね?」

「何で? 名古屋城なんて行っても面白くないじゃん」

「おもてなし武将隊を冷やかしに行くんだよ。知り合いが武将やっててさぁ。何のだったっけな――」

「どちらにしても、もう夕方なんだから。そういうのって昼間行かないと見れないんじゃあない?」

 鼻を鳴らして言ってみると、彼方が唸り始めた。

「じゃあ休みの日にでもさぁ」

「やだよ。興味ないもん」

「俺一人で冷やかしに行くのは寂しいから付き合えって」

「彼方は友達たくさんいるでしょ」

「あいつらそういうのに付き合ってはくれんもん」

 すねたみたいに唇を尖らしている。

 僕、彼方みたいにちゃらけた外見した奴と一緒に歩くのはちょっと、自分がその場に似合わない気がして嫌なんだけど。制服だって着崩していて、髪形は流行っぽくショートカットの毛先をくるくる跳ねさせててさ。自分が地味に思えるし。

「やだ」

「ケチ」

「ケチってだから、口癖なの?」

「は? 何が?」

 いぶかしげに首を傾げられ、しまった、と内心舌打ちをした。それが口癖なのは夢の中の彼方だ。

- 21 -

*前次#


ページ:



ALICE+