けたたましく鳴る携帯電話の音で目が覚めた。

 ほら、やっぱり。こっちが現実なんだ。よかった。本当によかった。

 寝汗でパジャマがべっしょり濡れている。

 外は今日も晴れ。カーテンの隙間から差し込んでくる優しい光にまぶたが細くなる。

 携帯電話を手に取ると、着信を示していた。相手は――康太だ。

 急いで電話に出る。

「おはよう。まだ寝ているのか? もう下に来ているんだが」

 名古屋弁じゃあない。全身が粟立った。

「あの、寝坊、したみたいで……ね、ねぇ、言葉――」

「悪い。気を抜くとつい普通に喋ってしまうな。ほら、早く支度をして出てきなぁて」

 ああ、よかった。全身が弛緩するくらい安心してしまう。

「すぐ支度する! あと十分待ってて!」

 慌てて通話を切って準備を終える。玄関から飛び出すと、康太が……鳥井さんと一緒に、なんでいるの?

 これは夢? 現実?

 何が夢なの? どれが本当の今なの?

 康太が頭を下げてきた。

「こいつ、幼馴染で。俺たちが付き合い始めたことをついうっかり話してまったんや。付いて来るって聞かなくて……本当にすまない」

「何その妙ちくりんな名古屋弁。似合わないんだけど?」

 鳥井さんが、長い髪を肩から振り払いながらからかうように笑った。

「話すの初めてよね? 二組の鳥井です。紹介があったとおり、康太とは幼馴染なのね。それで、こいつがこないだからやけにそわそわしてるもんで気になって、付き合ってること無理やり聞き出しちゃった。ごめんね」

 よろしく、と手を差し出され、それを反射的に握る。

「お前が混ざるのは今日だけだからな」

「あれ? 名古屋弁は?」

 にやにやと、人の悪い笑みを浮かべている鳥井さんの後頭部を康太が勢いつけて叩いた。

「たーけ。本当、勘弁しろ」

「たーけって何? ねぇ、何? たわけ? ばか? あほ?」

 次々と鳥井さんから言われ、康太の顔がどんどん赤らんでゆく。

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