昨夜のうちにポストを漁っといてよかった。まさか高校生の身で、外へ一晩中出てはおられないだろう。ああ、羽島君が下着を夜干すような男だったならば。ゴミを夜のうちから出すような奴だったならばどんな楽だったことか。しかしそれをしない彼にまた、好感を持ってしまう。きっときっちりとした性格なのだ。
はやる手を抑えられず、駅のトイレに入って封筒をポケットから取り出す。指が微かに震えた。これで、初めて彼の私生活に触れることができる……しかし見てよいものか。いや、今更だ。
白い封筒の頭を破り、中に入っている手紙を取り出す。
そこに書いてある文字へ目を走らせると――何だこれは。
華奢な文字からして女だろう。それはいいとして内容が問題だ。そこには羽島君への文句がつらつらと書かれていた。
――五股!? 嘘だろう? あんなに優しげに微笑む奴がそんなことをする訳がない。自分が助けた人間に何も言わずにただ頭を下げて去っていくようなシャイボーイなのに、何かの間違いだ。
羽島君はもしかして嫌がらせを受けているのだろうか。
心配になりながらも、腕時計を確認すると――遅刻だ。
急いで手紙をポケットへしまい、走り出す。
これは悠長にしていられない。出勤もだが、俺が羽島君を守ってやらなくては。
会社が終わったら彼の家に訪ねてゆこうと固く決意をし、改札を潜り抜けた。
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