ベルトに手をかけた瞳先輩が、睨むようにこちらを見てきた。
「お前は見るなよ」
「え、ど、どうしてですか?」
「……もういい」
諦めたようにため息をつかれてしまった。
ズボンを脱ぐかと思ったらば、先に靴下を脱ぐようだ。
「どうして靴下を脱ぐんでしょう?」
「まぬけに見えるだろうが。お前も脱いどけ」
指摘されてふと自分の足元を見つめる。確かに、裸で靴下と上履きを履いている姿は格好がつかない。頭を抱えて床を転げまわりたくなる程の羞恥心が今更湧き上がってきた。
靴下と上履きを放り投げるように脱いでいる間に、瞳先輩はボクサーパンツ一枚の姿になっていた。ああ、ズボンを脱いでいる姿が見られなかった……とか呻いている暇は無い。
瞳先輩が机に座り、手招きをしてくる。おずおず近寄ると、後ろ頭を掴まれ唇を合わせられた。中腰は少々辛いので、机の上に片手をついてキスに応える。
唇を合わせず、舌だけを絡ませ合っていると、唾液が瞳先輩の腹部に落ちていった。それは少しずつ、流れ落ちてゆく。
「っぅ」
くすぐったかったのか。それとも今のは、喘ぎ、声でしょうか。
いや、俺も凄く興奮している。間違いない。股間がフルバーストしそうだから。
瞳先輩が、微かに眉を顰めた。
唇を合わせたまま、隙間より吐息が漏れて――
「友博、痛い」
「え、すみません。歯が当りました?」
即座に唇を離すと、首を横に振りながら下を指された。
「違う。お前のそれが腿に当って痛いんだ」
「うわぁ、すみません!」
いつの間にか瞳先輩の脚の間に身体を入れ、腿の横へと腰を擦り付けていたらしい。犬か、自分。
飛び退ろうとしたのだが、瞳先輩に腕を掴まれた。
「男同士のやり方、わかるか」
わかるに決まっているじゃあないですか。俺がどれだけ先輩との合体を夢みて勉強したと思っているんですか。なんて言えるわけが無い。
「一応、あの、調べましたけど」
「ローションとゴムは俺が用意しといたから。そこの鞄の中に入ってるもんで、出して準備しろよ」
まさか、ひ、瞳先輩も、合体を夢見て、あの、その、一人でオナニーとかしたのでしょうか。と、心の中で問いかけながらじっと目を見つめてみる。
頬が、ほのかに赤い。ぷいっと顔を背けられてしまった。
「さっさとしろ」
恥ずかしがっているのだろうか。かわっ、いいどうしよう凄くかわいい可愛すぎて今、股間の大砲から危うく弾が飛び出すところだった。危ない。
下腹部に力を入れながら衝動を堪え、床に落ちていた瞳先輩の鞄へと手を伸ばす。
中にあったジップロックに小さなプラスティック容器とコンドームが入っていた。
「どうして、ジップロックなのだろう」
「万が一ローションがこぼれでもしたら大変だろうが」
吐き捨てるように言われた。ああ、疑問を声に出してしまっていたのか。
ジップロックから二つのアイテムを取り出して、瞳先輩のもとへ戻る。
「キャップ、開けてやるから両手を合わせて差し出しとけ」
言われた通りにすると、瞳先輩がプラスティック容器のキャップを長い指で外し、上からローションを手の平へと流してくる。
少々冷たかった。手のひらから腕へ、鳥肌が走る。
キャップをまたしめると瞳先輩は、それを床へ放り投げた。ワイルドだ。
「それ、手の平で温めておけよ」
頷き、ローションが床に零れ落ちぬようそこへ意識を集中させながら手の平を擦り合わせて温める。
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